2012 Fiscal Year Annual Research Report
従来捨てていた測定結果を用いた量子暗号の鍵レートの向上
Project/Area Number |
22760267
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 隆太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10334517)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 量子暗号 / 有限長 / BB84 / B92 / 単一光子 |
Research Abstract |
2012年度は、BB84量子鍵配送プロトコルにおいて送信キュービット数が有限であるときの林・鶴丸の安全性解析を改善し、同一条件下で得られる秘密鍵長を増加させた。具体的には、林らはキュービットに生じた位相誤りの数を区間推定する際に、誤り数が従う超幾何分布の裾確率を厳密に数値計算せず上界を代わりに用いて、安全に取り出せる秘密鍵長を算出していた。我々は、超幾何分布の裾確率の数値計算を高速に行う手続きを新たに提案し、それを用いて安全に取り出せる秘密鍵長を計算する手続きを提案し、提案手法と林らの従来法により得られる秘密鍵長を比較し、提案手法の有効性を確認した。この成果は2012年9月にシンガポールで開かれたQCRYPT 2012で発表した。 また、B92量子鍵配送プロトコルにおいて安全に取り出せる秘密鍵長を算出する際、従来は精巧に工夫された不等式を巧妙に操作して数値を求めていた。2012年度は安全に取り出せる秘密鍵長を、プロトコル実行中に得られた測定結果を与えうる量子通信路の凸集合上の凸関数として表現できることを明らかにした。この知見により秘密鍵長を通常の凸最適化アルゴリズムを適用して算出することが可能になった。これらの知見を利用して凸最適化により秘密鍵長を数値計算し、従来法による秘密鍵長と比較をした。その結果量子分極通信路において従来は分極レート4.2までしか秘密鍵を共有できなかったが、提案手法では6.5まで秘密鍵の共有を可能にすることを明らかにした。これは大幅な改善である。この成果は2013年7月にトルコイスタンブールで開かれる2013 IEEE International Symposium on Information Theoryで発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
だいたい予定どおり進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度はB92プロトコルについて前年度の研究成果をキュービット数が有限である場合に適用できるように拡張し、また従来捨てられていた測定結果も考慮に入れて秘密鍵長を算出できるように拡張する。
|
Research Products
(2 results)