2011 Fiscal Year Annual Research Report
月探査衛星かぐやで取得した自然波動データを用いた月の電子密度構造の統計的推定
Project/Area Number |
22760297
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 由貴 金沢大学, 電子情報学系, 助教 (30361976)
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Keywords | かぐや衛星 / 月電離層 / 電子密度分布 / プラズマ波動 |
Research Abstract |
平成23年度は、22年度に開発した電子密度の月面高度プロファイル推定法をかぐや衛星で取得した自然波動の干渉縞のデータに適用することにより、月の昼夜、地球磁気圏の内外、月の磁気異常領域の内外など領域パラメータに関する様々な条件下での高度プロファイルの調査を行った。これは、その存在が長年議論になっているいわゆる,月電離層に関する新たな知見の発見を目的としている。結果として、衛星軌道から月面へ向かって電子密度が増加する例は無く、月電離層を裏付けるプロファイルは確認されなかった。従来の地球電離圏・プラズマ圏の影響を受ける電波掩蔽観測法と異なり、月周回軌道からの直接のリモートセンシングにより、月面上に高い電子密度の層が存在しなかったという解析結果は大変興味深いものである。この成果について、8月にトルコにて開催された国際電波科学連合総会において発表を行った。 また、かぐや衛星で連続的に取得された波動スペクトルのデータから電子プラズマ波の周波数を読み取ることで、衛星軌道上の電子密度に関する統計解析を行った。この結果、月の昼側領域における電子密度が惑星間空間磁場との関係において特徴的な傾向を示し、特に昼夜境界領域において顕著になることが確認された。この境界領域における傾向は、計算機シミュレーションによる結果と定性的に矛盾しないことが確認されている。昼夜境界領域におけるより詳細な調査および電子密度分布のモデル化を進めるために、スペクトルデータではなく生波形のデータを利用した電子密度推定法を開発した。この手法では、直交2成分の波形データからの偏波情報を利用することで、低周波ノイズの影響を避けた低い電子プラズマ周波数の読み取りを実現している。これにより電子密度の値が小さいよりウェイク内部に近い領域の推定が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標であった月の様々な領域における電子密度の高度プロブァイルの推定が完了し、さらにかぐや衛星の軌道上の電子密度の統計解析も進んでいることから、計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果として、月周回軌道からのリモートセンシングにより月電離層の存在を示す直接的な証拠を得ることはできなかったが、その原因となり得る月面の電気的特性を同手法の応用により推定し、月面上の電子密度についてさらに調査を進める。すでに同手法に必要な干渉縞をもつ自然波動のスペクトルデータが抽出されていることから速やかに解析に着手できると考えている。
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