2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 千昭 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00456162)
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Keywords | 制御工学 / 数理工学 |
Research Abstract |
平成23年度は、大規模消散システムの階層化ネットワーク同定を考える上での根幹となる階層化ネットワーク同定の理論の構築、および準備的なアプローチとして大規模システムの有限周波数特性の解析を行った。具体的には、(i)大規模システムの階層化ネットワーク同定 (ii)有限周波数特性を満たすシステムの解析 の2つのサブテーマを並行して遂行し、消散的な階層化ネットワーク同定へと進展に向けて繰り越し課題として(iii)マルチエージェントシステムの目的関数の同定を行った。 (i) 大規模システムの階層化ネットワーク同定については、サブシステムが均質である場合に対して、理論的な同定の枠組みと部分空間同定に基づく同定アルゴリズムを与えた。従来までのアプローチではネットワーク構造の同定が困難であったが、本結果ではその同定を可能としている点に意義がある。この成果は、計測自動制御学会制御理論シンポジウムにて発表し、さらに国際会議American Control Conference 2012に採録決定となった。また、国際論文誌への投稿を準備中である。さらに、この結果をサブシステムが不均質な場合へと一般化し、計測自動制御学会制御部門大会にて発表した。この成果は、国際会議への投稿を検討中である。 (ii) 有限周波数特性を満たすシステムの解析では、集中定数系の有限周波数特性の消散性による特徴づけに関して、研究代表者による従来研究の成果をより洗練させて、国内学会誌システム/制御/情報にて発表した。 (iii) マルチエージェントシステムの目的関数の同定に関しては、申請者オリジナルの消散不等式と代数リカッチ方程式の解の関係の特徴づけを用いて、各サブシステムの振る舞いに基づき同定する手法を理論的に導出した。この成果は、SICE Annual Conference 2012にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の階層化ネットワーク同定については、平成23年度において主として取り組み、当初の計画通りの進展をしている。また、その消散性を有する大規模システムへの拡張に関しては準備的な取り組みとなったが、マルチエージェントシステムの目的関数の同定への進展が見られるなど、当初の計画の段階で予想した成果が得られる見込みである。このため、研究の目的に関しては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で得られた大規模消散システムの階層化ネットワーク同定の手法を電力ネットワークや流体力学など現実のシステムに適用する場合には、数値計算のアルゴリズムに関する十分な考察が必要である。具体的には、部分空間同定法による間接法や結合入出力法などが考えられる。これらの点に関しては、交付申請書の段階ではあまり考慮に入れていなかったが、本研究課題の最終年度となる平成24年度において、得られたアルゴリズムの利点や欠点について、十分に時間を配当して明確にする対応が必要である。
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