2010 Fiscal Year Annual Research Report
微分代数包含式近似に基づくスライディングモード制御の新実装理論
Project/Area Number |
22760321
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊植 亮 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (90362326)
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Keywords | 微分包含式 / 不連続性 / スライディングモード / マニピュレータ / 位置制御 / テレオペレーション / 姿勢制御 / ノイズフィルター |
Research Abstract |
スライディングモード制御(SMC)の分野において,微分包含式(不連続性な微分方程式)の理論的性質が研究されている.一方で,これらを実際にデジタル制御・デジタル計算に用いた場合には,チャタリング(数値解や制御対象の振動)などの実用上無視できない問題が生じることが知られている.それらの問題を防ぐための従来の方法では,微分包含式が理論上持つ特異な性質を損なうものであった. 本研究では,微分包含式の新しい近似手法「微分代数包含式近似」について,調査を行った.この手法は微分包含式特有の性質を保ちながらチャタリングを生じないという利点を持つ.平成22年度はこの手法に基づいた制御理論と計算理論を整備し,下記のような成果を得た. 【1】PID位置制御された剛体リンク系の強受動性を数学的に証明することに成功した.PID制御は,SMCに対して微分代数包含式近似を施すための重要な構成要素である.これによって,微分代数包含式近似を施したSMCを,位置制御器として用いることの妥当性を,理論的に裏付けることができた. 【2】ロボットの手先姿勢の制御のための新しい手法を考案した.この制御手法では,ロボットのモーターのトルクが飽和した際にも,振動やオーバーシュートなどの危険な挙動をせずに,なめらかに目標姿勢に収束することができる.この制御則を産業用マニピュレータに実装してテレオペレーション(遠隔操作)システムを構築した.良好な操作性と安全性を両立できることが示された. 【3】SMCの理論を信号処理に応用して,センサ信号のノイズを効率よく除去する信号処理アルゴリズムを提案した.従来の類似手法ではチャタリングやオーバーシュートが問題であったが,交代差分法に基づく新しい近似法によって,これらの問題を除去できた.たとえば,ロボットの位置センサ信号から速度や加速度を推定する手法として応用できる可能性がある.
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