Research Abstract |
鋼橋への高強度鋼の適用は,軽量化や製作コスト低減など,極めて大きな効果が期待できるため,世界的に増加している.しかし,高強度鋼は切欠き感度が高いために,応力集中が起こる溶接部の疲労強度の確保が重要な課題である.本研究は,この課題の達成を目的とするもので,高強度鋼の"軟質溶接継手"による疲労強度向上法の提示を目的とする. 今年度は,昨年度から実施を始めた800MPa級の高強度鋼を用いた軟質継手の高応力範囲の疲労強度について,疲労試験を継続するとともに,800MPa級の高強度鋼を用いた軟質継手試験体の金属組織の確認,溶接部の硬さ試験等を実施し,疲労強度とそれらの関係について調査した.軟質継手の疲労強度に及ぼす影響として,高応力範囲では軟質化の程度が大きくなると,通常の応力範囲下での疲労強度とは異なり,逆に疲労強度が低くなることを明らかとし,SEMを用いた破壊起点の観察より,高応力範囲下では軟質溶接部が局部的に延性的な破壊に移行するために疲労強度が低下するといったメカニズムを明らかとした.これより,800MPa級の高強度鋼を用いた軟質継手試験体に対しては軟質化を行う上で条件設定が必要であることを示した.また,研究機関中には予算的に軟質継手の大型桁試験の疲労試験には至らなかったが,大型桁試験システムを構築し,今後の大型桁疲労試験を実施可能とした. さらに,今後800MPa級の高強度鋼材として利用が期待されている橋梁用降伏点鋼材SBHSの800MPa級鋼材に相当するSBHS700鋼材を入手し,新たな鋼材に対する軟質継手とすることで期待できる溶接時の予熱無による制作コスト低減について,y形溶接割れ試験,金属組織観察,溶接部の硬さ試験により検証した.その結果,軟質溶接継手の採用による溶接割れ防止効果が期待できることを示した.
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