Research Abstract |
本研究では,構造物の効率的な維持管理を最終目標として,高精度の構造センシング手法の開発を行った.具体的には,精密小型加振機およびMEMS加速度計を搭載した無線センサネットワークシステムの試作機を開発し,実際に対象構造物の周波数応答関数を計測できることを実験により確認した. H22年度までで,精密小型加振機の試作機,無線センサネットワークの試作機を開発し,さらに周波数変調手法,時刻同期手法を実装し,対象構造物の周波数応答関数を計測できることを確認していた.H23年度は,1)周波数変調プログラムを自動で作成するプログラムの開発,2)有限要素法を用いた単純梁振動解析プログラムの高度化,3)ARX法を用いた周波数応答関数から周波数伝達関数を高精度に推定するプログラムの開発を行った. さらに,上記のハードウェアとソフトウェアからシステムを構成し,実際に室内実験を行い,対象構造物の周波数伝達関数を推知できることを確認した.実験では,2mの鋼製単純梁に精密小型加振機および無線センサノードを固定し,無線センサノードで加速度応答を計測した.この応答から変位の時刻歴波形を取得し,レーザー変位計の出力と比較したところ,そのずれは1%以下であり,高精度に周波数応答関数を取得できることが確認された.また,得られた周波数応答関数から周波数伝達関数を求め,単純梁の固有振動数,減衰定数を推定することができた.さらに,連続24時間以上の観測実験を行い,推定された固有振動数と減衰定数が周囲の温度に敏感に反応することを確認している.温度変化を高精度に捉えているということは,本システムの精度が非常に高いことを示す1つの証拠となるものと思われる. 本研究の成果を,土木学会論文集A2(応用力学)に投稿する予定で,現在執筆中である.
|