2011 Fiscal Year Annual Research Report
浅水空間の創出における適地選定法と効用評価の包括的アプローチ
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22760371
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入江 政安 大阪大学, 大学院・工学研究科, 講師 (00379116)
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Keywords | 水工水理学 / 水環境 / 環境質定量化・予測 / 環境政策 / 浅場・干潟 |
Research Abstract |
〈浅水空間の機能評価のためのモデル構築と実際の評価〉 浅水空間の創出による水域環境改善効果を評価するための流動・水底質モデルの改良を行った.具体的にはこれまでの底泥内の有機物分解過程の詳細なモデルに対し,底泥に吸脱着する無機態の機構を加え,無機態リンの水域への回帰機構の改良を行った.このモデルを大阪湾の底質に適用し,再現性の向上を確認した.本モデルは世界的には主流の有機物分解モデルに対し,吸脱着を重視するモデルを組み合わせたことになり,事実上基礎方程式系の見直し(新提案)にもつながる. 〈浅水空間の社会的インパクトの定量化手法の検討〉 初年度に構築した経時変化に対応できる沿岸陸域における動学的環境応用一般均衡モデルを拡張し,流動水質モデルと同時に計算できる長期連動モデルを構築した.これにより,従来は総量規制の経済学的影響と水質への影響を別々に評価できるのみであったが,本モデルでは,海域における水質指標の変化に応じて総量規制を動的に変化させることが可能になった.解析結果の一例として,高度経済成長期を通じて,湾奥部の表層CODを3mg/1以下にするためには陸域負荷を252(t/day)以下にする必要があり、累計5.3兆円の経済損失が生じると予測された. 本モデルの構築により,浅水空間の創出による直接的経済学的効果とまたそれがもたらす総量規制の緩和による経済的損失の減少量を推計することが可能となり,浅場空間の創出が陸域空間全体へもたらす効果として,評価することが可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
底質モデルに対する感度解析的検討については十分に実施できなかった一方で,社会的インパクトの定量的評価手法の構築においては,当初の予定以上に進展し,水環境モデルと経済・社会モデルを結合した長期間連動モデルの構築まで到達したため
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Strategy for Future Research Activity |
昨年+分でなかった底質モデルの感度解析的精度検証について,追加の現地調査および室内実験を実施し,さらに,本年度においてはより広範な水域の水底間のやりとりを把握するため,大阪湾西部海域まで調査海域を拡大して実施する.また,水環境・経済社会長期連動モデルにより,浅水域の創出が産む社会的インパクトの評価を,浅水域の創出によって減ぜられる総量規制の量とそれによる経済的損失の減少効果を定量的に把握する.また,これらにより浅水空間の創出による包括的評価手法を提案する.
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