Research Abstract |
本河川の下流域のうち,海の潮汐が水位や流速,周期的な変動が起こる場所を「河川感潮域」と呼ぶ,河川感潮域では海水が遡上する際に微細土砂が内陸側に運搬されることがあり1),これを「高濁度水塊」と呼ぶ.河川感潮域ではこのような土砂の堆積により航路の阻害や河積の低下が起こることがあり,河川感潮域における懸濁物質の凝集・沈降による底泥の形成メカニズムが重要視されている.懸濁粒子は一般的に,単一粒子で存在することは少なく,まとまった数の粒子がフロックを形成することが多い.フロックの沈降速度はフロックを構成している一次粒子より速いが,同じ粒径の単一粒子と比較すると密度が低いために沈降速度は遅い,このように有効密度を粒径の関数で表現するフロック密度関数は現地で得ることは困難であり,国内での研究例はほとんど例がない. 以上のことより,本研究では,独自に開発したフロックカメラを用いて現地におけるフロック密度関数およびSSの沈降特性を明らかにすることを目的とし,フロックカメラを用いた筑後川感潮域でのフロック沈降特性の観測を行なうこととした.研究では高濁度水塊の運動が活発な筑後川感潮域において独自に開発したフロックカメラを用いた現地調査を行い,SSの組成に着目したSSの沈降特性について考察した.以下にその結論を示す. 1.フロックの有効密度,沈降速度の変化 フロックカメラの画像解析により,実河川において様々な条件におけるフロック密度関数を取得することができた.その結果,フロック密度関数は一潮汐間で変化していることが確認された. 粒径100μmでのフロックの有効密度,フラックス基準中央沈降速度の変化から,底層では有効密度,平均沈降速度ともに上げ潮により満潮前に増大し,上げ潮時に底泥が再懸濁されて重いフロックを形成し,憩流時に重いフロックが沈降したと推測された.また,満潮時から下げ潮時にかけてはフロックの密度,沈降速度は減少しており,堆積した重いフロックは下げ潮時には再懸濁されないと考えられる. 2.フロックの沈降と懸濁物質の組成 フロック密度関数における乗数β,粒径100μmにおける有効密度,フラックス基準中央沈降速度について重回帰分析を行い,βは塩分濃度,有効密度はSS濃度とシルトの含有率,沈降速度は塩分濃度,SS濃度,藻類含有量,一次粒子含有率により表された.
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