2012 Fiscal Year Annual Research Report
黒部川流域における地下水位漸減現象の解明に関する研究
Project/Area Number |
22760376
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
手計 太一 富山県立大学, 工学部, 講師 (70391620)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地下水 / 非定常モデル / 自噴井戸 |
Research Abstract |
平成24年度においては、次の3つのサブテーマに沿って研究を実施した。 (1)自噴井戸の水量と水質の毎月の観測調査と自噴井戸の利用状況に関するアンケート調査 2011年から継続的に実施している自噴井戸の水量と水質の毎月の観測調査の結果、自噴水量や水質の詳細な季節変化が初めて明らかになった。 アンケート調査の結果、最近になっても自噴井戸は増加していることがわかった。また、冬季の地下水障害が潜在的に多いことが明らかになった。 (2)非定常3次元地下水モデルの構築と高精度化 本研究では、アメリカ合衆国地質調査研究所が開発し、ソースコードが公開されているMODFLOWを利用して非定常地下水モデルを構築した。支配方程式は、連続式とダルシー則から導かれる。モデル領域は、境界条件の影響を受ないように実際の扇状地よりも広く16 km×16 kmと設定し、250 m × 250 mメッシュのDEMデータを使用した。帯水層をできるかぎり正確に表現するために、扇状地全域に283地点のボーリング柱状データを本モデルに挿入し、地層を鉛直方向6層に分類した。4種類の土質分類を6層の地層に当てはめ、それぞれの透水係数は既往文献を基に設定した。涵養量は、日平均降水量として、水田に水が張られる5、6月にはたん水深を加えた。境界条件は難透水として、流動境界条件は海と黒部川を設定した。観測データが豊富にある過去3年間について数値計算を実施した。地下水位等高線は、既往研究と定性的にほぼ一致している。また、50 mよりも低い地下水位等高線において、黒部川河道部を中心に顕著な地下水嶺が認められており、本モデルにおいても同様の結果が得られた。三日市地点では、計算期間中全体に観測値よりも約10 m高い傾向があり、冬季に地下水位が低下する変動を正確に表現できていない。この要因は、揚水などの人為的な影響を考慮していないためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、自噴井戸の現地調査や自動観測装置の設置によって、水量と水質の極めて詳細な季節変化を明らかにしてきた。また、冬季における消雪用水のための大規模な地下水揚水が水質に与える影響についても研究を進めた。その結果、いずれの水質項目についても、長期的には影響がないことがわかった。以上のように、自噴井戸の現地観測に基づく研究についての達成度は80%である。残りの20%については、短時間の大量取水が、短期的な水質に与える影響について調査する必要がある。 次に、黒部川の失水量、得水量の現地調査については、H24年度は、大規模な出水がなかったため、観測を実施することができなかった。前年度までの結果では低水時のデータのみであり、出水期のデータが必要である。これについての達成度は70%である。次年度は、大規模でなくとも、少しでも高水の時期に観測を実施する。 最後に、数値モデルによるアプローチであるが、基礎的なモデルについては高精度に構築した。残りは解像度を上げること、そしてより観測値に近い計算結果を算出するために、パラメータの最適化が必要である。また、今後の将来予測計算も必要であり、数値モデルについての達成度は60%である。 以上から、全体の達成度は70%であり、残りの1年で達成度は100%に達する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,黒部川扇状地における非定常地下水モデルの精緻化と精度検証を実施する.昨年度までに,研究代表者は,アメリカ合衆国地質調査研究所(USGS)が開発し,ソースコードが公開されているMODFLOWを利用して非定常地下水モデルを構築した.連続式と3次元方向のダルシー則を連立させることによって流動を表現することができる.今年度は以下の改善点を実施し,精度向上と現象解明を行う. (1) 昨年度までは283本のボーリングデータを利用して,空間を自動的に補完して地質図を作成し,地盤状況を高精度化した.しかしながら,ボーリングデータは市街地部に集中しているため,上流,中流部の再現性が悪かった.本年度では,細かい帯水層をハンドメイドで作成し,より現実に近い地盤状況を再現し,流動計算に反映させる.また,水理パラメータを4種類の土質分類を6層の地層に当てはめ,それぞれの透水係数は既往文献を参考にしていた.しかし,ボーリングデータを多数挿入しているため,今年度は,逆推定手法を利用して,より再現性の高い透水係数を推定する.具体的には,大域的探索法であるGML法を利用する. (2) 次に,昨年度までは計算機資源の問題でメッシュサイズを細かくできなかった.250m×250mのDEMデータを利用していた.今年度は,解像度を上げ,50m×50mのメッシュサイズで計算を行う. (3) これまで涵養量は,日降水量と5月,6月の代掻き時の湛水深を与えていたが,地下水量が少なく見積もられるため,今年度では年間の水田の水利用を精緻に反映する. (4) 本年度では人口揚水のデータを挿入し,特に,冬の消水揚水の影響を再現する. 以上によって,地下水流れの再現性は向上すると考える.さらに,温暖化実験として,降雪が降雨に変換したことによる地下水への影響を評価する.温暖化実験には,MRI-AGCM20のデータを利用する.
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Research Products
(3 results)