Research Abstract |
研究初年度である今年度は,地域コミュニティにおける離脱・発言メカニズムについてゲーム理論を用いてモデル化し,地域公共財からの離脱の非対称性(域内住民は離脱が困難,域外住民は離脱が容易)が発言行動に及ぼす影響を検討した.その結果,離脱の非対称性に起因して,域内住民の発言行動が抑制される可能性が示された.さらに,地域公共財からの離脱が域外住民の学習行動を阻害する可能性が示された.すなわち,域外住民において,地域公共財から離脱する可能性が存在するため,適切な判断を為すための学習意欲が低下し,その結果,その発言内容の質が低下するという結果が確認された.以上の結果を踏まえて,地域学習を促進し,地域コミュニティの改善に資する適切な社会的判断を為すためのガバナンスのあり方を考察した. また,「離脱」と「発言」の相互関係について基礎的・実証的な検討を行った。まず,ハーシュマンの理論を基にして,「地域に対する離脱傾向が高い人は,発言する傾向は低い」,「地域に対する離脱傾向の高い人は,利己的・短期的な発言を行う傾向が高い」,「地域に対する忠誠が高い人は,離脱する傾向が低く,発言する傾向が高い」との仮説を措定した.その上で,これらの仮説を検証するため,目黒区商店街連合会に所属する商店主を対象にアンケート調査を実施した.調査データを用いて仮説検定を行った結果,本研究で措定した仮説が概ね支持される結果となった.
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