Research Abstract |
本年度は,地域住民の離脱と発言行動が当該地域の社会経済環境にどのような影響を及ぼすかについて検討するため,全国市町村ごとの離脱指標(転入・転居率,地価の増減等)と発言指標(投票率,NPO活動数等)を収集し,これらの指標と各種の社会問題指標(自殺率,放置駐輪数等)との関連を調べた.その結果,一部の離脱指標及び発言指標と社会問題指標との間に有意な関連が認められた.そして,離脱傾向が高く,発言傾向が低い地域ほど,社会問題が起こりやすいという可能性が示唆された. また,地域コミュニティにおける離脱行動と発言行動の規定要因を実証的に検討するため,松山市の住民を対象にしてアンケート調査を実施した.この調査では,調査対象者の離脱傾向と発言傾向を調べるとともに,地域愛着や帰属意識等,地域との結び付きの強さを測定した.調査データから,地域との結び付き意識が高い程,離脱傾向が低く,発言傾向が高まる可能性が示された.さらに,地域における諸経験の「記憶」と離脱傾向及び発書傾向との関連を調べたところ,両者の関連が認められ,地域の記憶を想起した場合に,そうでない場合に比べて,離脱傾向が低下し,発言傾向が向上することが示された.この結果より,地域における「記憶」を想起し,地域との関係の時間的連続性を強化することが,地域愛着等,地域との共時的なつながりの強化に寄与するとともに,離脱・発言という行動にも影響を及ぼし得る可能性が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
離脱と発言メカニズムを有効に機能させる上での政策モデルを構築し,地域ガバナンスのあり方についての政策的示唆を得る.また,昨年度,全国市町村の離脱指標と発言指標の収集を行ったが,まだデータ化出来ていないところがあり,データ収集と分析を継続して行う.
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