Research Abstract |
東南アジアの各都市では都市内交通手段として二輪車,とりわけオートバイが主要な役割を果たしており,交通流に占めるその割合は非常に高い.しかしながら,自動車と二輪車が混在した交通流に特化した交通制御・運用手法に関しては未だ確立されているとはいえず,交通効率性・安全性の両観点から検討を進める必要がある.特に,二輪車混入率が高い国の中でも経済水準の高い台湾では,二輪車に特化した交通制御・交差点運用が散見されるものの,その整備効果を評価する手法やそれらの導入基準は体系化されておらず,東南アジア各国での喫緊の課題となっている. 本年度はとりわけ交通効率性に着目し,二輪車・自動車混合交通流の効率性評価方法を提案した.さらに,それに用いて,台北・バンコク・ハノイ・プノンペンの交差点で行われた実観測データに基づいて交通効率性を比較,交通効率性を低下,あるいは向上させる要因を特定し,改善方策を提案した.主要な成果は以下の通りである. (1)混合交通流の効率性を評価するに当たり,乗用車換算係数は用いず,飽和交通流に含まれる単位時間当たりの各車両台数ベクトルにより評価する手法を提案した.この場合,各観測点のnormにより交通効率性が定量化される. (2)同程度の二輪車混入率であっても,道路整備の比較的進んでいる台北・バンコクでは,ハノイ・プノンペンとの比較で交通効率性が高いことが明らかとなった.また,その要因として,後者の都市では車線の定義が不明瞭であり,二輪車と四輪車の混在の程度が前者より高いことが示唆された. (3)二輪車車線や赤信号時の二輪車滞留スペースの設置が交通効率性に及ぼす影響を定量化する手法を構築した.それに基づくと,道路整備が進んでいる都市では,二輪車と四輪車の時間的分離を進める方策,一方,道路整備の遅れている都市では二輪車用の車線を導入することで空間的分離を図る方策が有効であることが示された.
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