2011 Fiscal Year Annual Research Report
リバタリアン・パターナリズムに基づく家屋耐震化の促進制度に関する研究
Project/Area Number |
22760397
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤見 俊夫 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (40423024)
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Keywords | ナッジ / 耐震改修 / 地震 / リスク |
Research Abstract |
防災において個人や世帯の自助は極めて重要であるが,自発的な災害リスク移転・軽減は進んでいない.人々が災害リスクに適切に対処することが苦手であるためである.耐震補強が普及しないのも,その効果の曖昧性が過度に忌避されていることが一因だと考えられる.本研究では,リバタリアン・パターナリズムの観点から,効果の曖昧性を解消して家計の耐震補強を促進するため,耐震補強したにも関わらず被災後倒壊した家屋については再建費用を補償するという事後補償制度に着目する.本研究ではその制度設計と効果の予測を目的とする. 本研究では,効果の曖昧性のために耐震補強を過小評価しがちな家計に対し,耐震補強を促すようなリバタリアン・パターナリズムに基づく制度を提案する.それは,耐震補強後の家屋が地震により損壊した場合,再建費用の補償を行うという事後補償制度である.この制度により,家計は必ず耐震補強の効果が得られるので,耐震補強効果の曖昧性の影響は解消することになる.実際,家電や自動車などでは保証書という形で機能している.本研究では,この制度の具体化と実社会への適用可能性について検討する.本年度では、そのために下記の点を明らかにした.(1)耐震補強の効果について家計はどの程度の曖昧性を認知しているか.(2)その曖昧性を解消させることで,耐震補強の価値はどれほど増大するか.アンケート調査データを計量経済モデルにより分析した結果、家計は耐震補強の事後保証制度について1万7千円の価値を認めていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐震補強後の家屋が地震により損壊した場合,再建費用の補償を行うという事後補償制度についてのアンケート調査データを分析した。回答者には、その補償制度の付加したうえでの耐震補強とそれがない耐震補強のどちらか一方をランダムに提示し、その支払意志額の差額を事後補償制度の価値として推定した。その結果、統計的平均世帯の家屋の耐震補強に対する支払意志学は年間52700円×30年であり、事後保証制度を付加することで耐震補強の価値は年間70300円×30年まで増大することが明らかになった。つまり、事後保証制度の付加によって家計の認知する耐震補強の価値は33%も増大することが明らかになった。つまり、統計的平均家計の認知する事後保証制度の価値は年間17600円×30年と推定された。 家計の事後保証制度の価値評価に加えて、耐震補強後の家屋が倒壊するリスクとその曖昧性のもとで、行政と耐震補強業者にどのような割合で倒壊家屋の修復費用を負担させるべきかをゲーム理論を用いて検討を進めた。その結果、平成23年12月、費用負担率を一意に決定するためには、家屋倒壊リスクの大きさに応じて業者の曖昧性回避度を特定する必要があることが明らかになった。事前には、リスクの大きさに関わらず曖昧性回避度を特定すればよいと想定して、業者へのアンケート調査の準備を進めていたため、調査計画を全面的に修正する必要が生じた。遅延期間については、アンケート調査計画の見直しに4カ月が必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究費を繰越し、平成24年度が最終年度であるので記入しない。
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Research Products
(3 results)