2011 Fiscal Year Annual Research Report
固相抽出-LC/MS法を用いた溶存有機物(DOM)の新規解析手法
Project/Area Number |
22760411
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日下部 武敏 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (40462585)
|
Keywords | 固相抽出 / 溶存有機物 / 脱塩 |
Research Abstract |
近年、湖沼等の閉鎖性水域において難分解性有機物の増加・蓄積が報告されるなど、流域圏における有機物の動態や生態系への影響に注目が集まっている。しかし、機器分析により明らかにできる成分は、有機物全体の10~20%程度と言われ、有機物の発生源や水環境中における環境動態および機能・役割についてはほとんど明らかにされておらず、湖沼等の有機物に関する基盤情報が欠如している。本研究課題は、流域圏における溶存有機物(dissolved organic matter, DOM)の機能や役割の解明に向け、固相抽出法およびLC/MS法を組み合わせた解析手法の新規開発を行うものである。 平成23年度は、研究計画全体を踏まえ、文献考察および固相抽出法について検討を行った。現在のところ、湖沼の有機物を網羅的かつ定量的に解析できる体系的な手法は見当たらない。LC/MS等の高度機器分析では、湖水中でDOMと共存する無機成分に妨害されることが多いだけでなく、その影響を定量的に評価することが困難である為に、分析結果の信頼性を低下させると考えられる。複数のイオン交換系固相カートリッジを組み合わせることにより、湖水中から主要な無機イオンを除去できる手法の検討を行った。本法では、主要な陽イオンおよび塩化物イオンについては定量的に除去可能であったが、硫酸イオンについてはその一部しか除去できないことが明らかとなった。したがって、本法は更なる検討・改良が必要なものの非常に簡便に処理できるため、本研究課題の目的に適しておりより効率的な新規メソッドの開発につながることが明らかとなった。 本研究課題では、水環境中の有機物全体を網羅的かつ定量的に検出できる解析・評価手法の新規開発を目指すものであり、固相抽出とLC/MSを組み合わせた新規解析手法により湖沼の有機物研究のさらなる発展に資することが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度はLC/MS分析に供するための前処理として、複数のイオン交換系固相カートリッジを組み合わせた脱塩・精製手法を検討・確立した。LC/MS法については様々なカラムを使用して条件検討を実施した。したがって、当初の交付申請書に記載した計画のとおり、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、過年度までに検討し確立した手法を組みわせ、実試料として琵琶湖溶存有機物(DOM)に着目して本法を適用する。これにより、本研究課題で開発した新規解析手法の有効性を示すとともに、琵琶湖DOMの発生源や分解挙動等の解明に向けて有機物全体についての質的な(定性的な)基礎情報の収集に精力的に取り組む。さらに、本研究課題で得られた成果を学会等において成果を公表をしていく予定である。
|