2011 Fiscal Year Annual Research Report
散水消火を予測する高精度数値シミュレーションツールの構築
Project/Area Number |
22760437
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
田中 太 福井大学, 工学研究科, 准教授 (60401791)
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Keywords | 火災 / 消防 / 防災 |
Research Abstract |
平成23年度は、数値シミュレーションプログラムへの新しい消火モデルの実装に取り組んだ。また、数値シミュレーションモデルからは、散水消火時における温度や発熱速度、そして各種ガス濃度が得られるので、それらと比較するためにガス濃度分析に基づく発熱速度測定のための新しい実験装置を製作した。この実験装置では、最大25kW程度の発熱速度における実験結果を得ることができた。散水無しでの燃焼実験において、天秤による発熱速度測定結果とガス濃度分析に基づく発熱速度測定結果の比較を行い、実験パラメータの調整を行った。しかしながら、散水ありの燃焼実験では予測される発熱速度を大きく下回る測定結果となった。これは、最大25kW程度の小規模な燃焼実験では燃焼ガス中に含まれる酸素の減少量がごくわずかであるため、散水に伴って混入する水蒸気が測定精度に大きく影響していることがわかった。実験装置の開発と併せて、数値計算プログラムの改良を行い、実験装置と同条件での散水時における数値シミュレーションを試みた。水噴霧による散水消火においては、水滴の蒸発に伴う水蒸気の発生量が大きく、窒息消火に貢献することが予測されるが、数値シミュレーション結果によると、火源直上に散水された水滴の多くはただちに蒸発し、火源からの上昇気流によって押し流され、実際には窒息消火にはあまり貢献しないことがわかった。火源の周辺に散水された水滴はそこで蒸発して水蒸気になり、火源自体が燃焼に必要な空気を巻き込む気流に乗って、火源の根元から炎に接近することが分かった。散水無しと散水ありの実験における火源直上の温度分布は実験結果と概ね一致したことから、水滴の蒸発潜熱による熱気流温度の低下はある程度再現できた。しかしながら、現状の数値計算プログラムでは、数値的な不安定性が高く、実験結果との検証が不十分である。今後、燃焼と消火の計算と流れの計算の取り扱いを、強連成問題として、逐次計算ではなく同時計算に改善する予定である。
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