2011 Fiscal Year Annual Research Report
重症心身障害児の能動的活動を引きだす施設療養空間のあり方に関する研究
Project/Area Number |
22760447
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
山脇 博紀 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (60369311)
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Keywords | 建築計画 / 医療型障がい児入所施設 / 重症心身障害児 / 居室タイプ / 個人的なモノ / 個人領域の形成 / 居室滞在率 |
Research Abstract |
平成23年度の研究では、施設生活の拠点となるべき居室に着目し、居室の拠点性が上がることで施設生活の能動性が上昇するという仮説に立ち、重症心身障害児の療養空間の利用様態調査をおこなった。調査は医療型障害児施設の肢体不自由児施設2施設(K施設とR施設)を対象とし、居室内の個人領域形成の状況を把握するためのモノの描き取り調査と、障がい児童の生活展開を把握するタイムスタディ調査をおこなった。 居室タイプは[ベッド就寝(B)/床就寝(F)/混在(M)]と[個室(S)/個室的多床室(Sm)/多床室(M)]とで分類し、全9タイプとしている。このうち、K施設には床就寝の個室(F-S)と床就寝の個室的多床室(F-Sm)があることが特徴的であり、一方R施設にはベッド就寝と床就寝が混在する多床室(M-M)があることが特徴的である。 モノの描き取り調査による就寝場所周りの個人的持ち物の点数を居室タイプ別に比較すると、ベッド就寝多床室(B-M)の一人あたりの平均点数は19.6であった。これを1とした場合、(M-M)では0.65、(F-Sm)は1.68、ベッド就寝個室(B-S)は2.06、(F-S)は2.72となった。床数別では、個室>個室的多床室>多床室となり、就寝タイプでは、床就寝>ベッド就寝>混在の順で多い。特に、床就寝タイプの居室の個人領域の作り込みは点数100点を超える居室がみられるなど顕著である。 一方、生活展開として居室滞在率を調べたところ、居室滞在率とモノの点数は相関しないことがわかった。居室滞在率は、ケア方針や共用空間の質にも連関するファクターを持っており、共用空間の過ごし方の詳細な調査が必要であるが、少なくとも居室への「閉じこもり」は生じていないことが判明した。 今後は共用空間での利用様態を詳細に分析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象施設のR施設において、居室の割り当ての大幅変更がおこなわれた。施設環境での行動を環境行動学的見地から解明するためには、個人領域形成の時間的発展と生活展開との連関を解明したいのであるが、割り当て変更によって居室移動がおこなわれたことで、個人領域形成への時間的発展がバラケてしまった。このため、調査のやり直しを余儀なくされ、現在、調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
R施設の調査をおこなうとともに、他の医療型障害児施設の調査を行う予定である。具体的には、医療型障害児施設の中でも重症心身障害児施設を対象とし、先駆的な空間構成を持つふたつの施設(B施設とW施設)においてH23年度と同様の調査を予定している。 これにより、医療型障害児施設の2つのタイプ、肢体不自由児施設と重症心身障害児施設の特徴と連関した施設空間分析が可能となり、今後の医療型障害児施設の空間づくりの重要な知見を提示できると考えている。
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Research Products
(1 results)