2011 Fiscal Year Annual Research Report
欧州都市のジェントリフィケーションへの対応策と多文化共生へ向けた都市戦略
Project/Area Number |
22760448
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
阿部 大輔 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (50447596)
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Keywords | 都市再生 / 欧州都市 / ジェントリフィケーション / 多文化共生 / 移民 / バルセロナ |
Research Abstract |
H23年度は、ジェントリフィケーションや多文化共生の観点から見た都市再生の先進事例の再評価ならびに新たな都市戦略の可能性を主題に設定し、研究を進めた。都市再生と社会的排除のテーマを解明するにあたり、(1)都市化の過程で初期は国内移民、後に国外移民の受け皿となってきた、都市拡大成長期に建設された郊外部の大規模住宅団地と、(2)都市化の過程で初期は高密化とその後の空洞化を経験し、後には移民地区化、現在ではジェントリフィケーションによりサービス産業化している歴史的市街地を対象とした。(1)型として、カンプ・クラー地区(タラゴナ)、クロイツベルグ地区(ベルリン)、(2)型として、バルセロナの旧市街、サン・フランシスコ地区およびラ・ビエハ地区(ビルバオ)、ラバピエス地区(マドリード)、ポルタ・パラッツォ地区(トリノ)、マルセイユ旧市街を取り上げ、分析した。(2)型の場合、伝統的なコミュニティとの軋轢やジェントリフィケーションによる住民層の変質といった問題が顕著であり、むしろそうした摩擦をきっかけとしてお互いが知恵を出し合い、公共空間の使い方等のまちのルールづくりにまで発展させようとするケースが確認できる一方で、(1)型では、地理的な困難もあり、社会的統合への試みは容易でないことが明らかとなった。分析対象都市は、いずれも物的環境整備としての問題市街地の修復プログラムを有しているが、行政による多文化共生を含む社会プログラムを有するのはバルセロナ、タラゴナ、ベルリン、トリノ、マルセイユである。ジェントリフィケーションへの対応策として代表的なのは地価の高騰による追い出しを防ぐための家賃コントロールが代表的であるが、それを除くと都市計画的観点からの明確な方法は確立されていない。むしろ、ベルリンやバルセロナの例で判明したように、公共空間の質を高めることが、結果として地区のジェントリフィケーションを惹起し、空間の私有化の方向に進む危険性がある。しかし、行政による社会的包摂プログラムが様々な地区で戦略的に活用されており、そのプロセスにいかに多様な利害関係社が関与していくかが問われている
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