2011 Fiscal Year Annual Research Report
出火リスクを考慮した地震時における市街地の火災安全性能評価と出火対策効果の把握
Project/Area Number |
22760449
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
廣井 悠 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (50456141)
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Keywords | 地震火災 / 東日本大震災 / 津波火災 |
Research Abstract |
本研究は都市の火災安全性能を正しく把握し,また現在数多くなされている様々な防火対策の妥当性と限界を論じるため,出火構造の適切な記述を試み,出火対策を含めた総合的な防災対策の評価を行うものである.本研究は特に都市域を対象として,大規模地震発生時の出火被害を把握し,同時に出火対策の効果把握を最終的な目標とした.研究成果としては,従来の地震火災のみならず研究期間の間に発生した東日本大震災における地震火災の出火構造を把握し,その対策について定性的な分析を行うことができた.なかでも,津波火災の出火と延焼に関して,現地調査やアンケート調査を行い,他の研究期間が十分になしえなかった一定の結果を収めた点は先駆的なものと考えられる.本研究では,地震火災を1.地震動によるもの,2.間接的に地震に由来するもの(停電時のローソク使用による火災),3.津波火災に分類し,なおかつ津波火災をa.基本型(主として三陸沿岸などの特徴),b.都市近郊平野部型(主として仙台平野などの特徴),c.危険物流出型(主として気仙沼の特徴)に分け,その被害と対策効果について分析している.また津波火災の出火数についても,瓦礫量とプロパンガスボンベの量,車の数などを代替する「全壊棟数」との相関が極めて高く(R^2=0.765),より精緻な津波火災の被害予測に向けた事前検討を行うことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震火災の出火メカニズムの推定を,東日本大震災の事例も含めて分析できた点は評価できるものと考える.本研究の成果として,2011年自然災害学会大会にて学術優秀発表賞を受賞した.他方で,研究成果の延焼シミュレーションなどへの組み込みについては,東日本大震災時に発生した火災の詳細なデータ入手が遅れ,量的かつ独創的な検討は出来なかった.地震火災被害の量的把握も含め,今後の課題となる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は津波火災も含めて,地震火災の定義を見直し,かつ精度良い地震火災被害の量的予測が求められるものと考える.本研究の成果はまさにこの点の基礎となるべきものであるが,そのためには東日本大震災の地震火災をその被害・消防活動なども含めてより詳細にサーベイする必要があり,その点について現在研究を進めているところである.
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