2010 Fiscal Year Annual Research Report
路地単位特性を活かした接道不良長屋の保全的更新に関する研究
Project/Area Number |
22760454
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
原田 陽子 福井大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00377475)
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Keywords | 木造密集市街地 / 長屋 / 接道不良 / 路地単位 / 保全的更新 |
Research Abstract |
本年度は、市街地空間変容プロセスの把握として、選定した路地単位ごとの(1)空間特性の現況把握、(2)市街地変容プロセスの把握、(3)コミュニティ活動実態の把握、(4)路地単位特性の把握と特徴的・典型的路地単位の抽出、(5)公図と登記簿による土地と建物の権利関係の把握を行った。さらに、空堀地区内の接道不良長屋所有者を対象にしたヒアリングも実施した。 以上の調査結果より、主に以下の内容が明らかになった。 1)空堀地区内の空間条件を路地単位ごとに見ると、長屋数や地域資源の有無、地形条件、街路形態、路地単位の規模など、路地単位によって条件が大きく異なる。また、コミュニティの状況では、全体的に現在は行われなくなった活動も多いが、近年では、新規流入者を交えた活動や福祉関係の活動など活動内容は多様化の傾向にあり、地蔵や祠の管理・お祭りなどが、多くの路地単位でコミュニティ活動の核となって現在も継続的に行われている。 2)接道不良長屋所有者は厳しい制約条件の中でも様々な改善手法によって居住の継続を実現しており、居住改善状況を5つのタイプに分類することができた。特徴的な例として、「A.駆体の一部を残した全面的増改築タイプ」は、「建替」という位置付けにしないために、柱や梁の一部を残しての全面的増改築や、前面(道路側)の駆体の一部を残し裏側を建て替える手法であり、全てのタイプの中で最も多く見られた。「B.複数戸利用タイプ」では、ほとんどの世帯で、同じ路地単位内などごく近い位置関係で複数の建物を所有しており、非隣接の複数の建物を利用していることを活かし建物ごとの接道条件に合わせてその利用内容を工夫している。 3)接道不良長屋所有者は、長屋の後継者については不明瞭である場合が多い。さらに長屋の維持に関しては、耐震・防災面や高層マンションによる影響、住戸単位での改修の困難さと共に、健康面や経済面で不安を抱える人が多い。
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