Research Abstract |
本研究では,物理的知見に基づき構築された延焼モデルを利用することで,文化財建築物を地震火災の被害から守るために整備される各種対策の有効性を,定量的に評価するための手法の開発を行う.さらに,開発した評価手法を利用することで,現行の地震火災対策の課題を整理し,それらの実効性を向上させるための方策を明らかにすることを目的としている. 平成22年度は,密集市街地に立地する文化財建造物の地震火災リスクを評価する手法を開発した.平成23年度は,リスク評価で利用している物理的延焼モデルに改良を加えることで,地域住民による消火活動,および沿道の散水設備が地震火災の危険性を低減する効果について評価を行えるようにした. このうち,地域住民による消火活動については,消火活動機材を利用できる地域住民の参集時間や,機材の起動時間などについても評価できるようにすることで,当該地域における消防訓練等の取り組みが地震火災リスク低減に及ぼす効果についても評価できるものとなっている.また,沿道の散水設備については,部材燃焼実験の結果をもとに,炎上建物から放射伝達される熱エネルギーの低減効果を評価している. 最後に,こうして開発したリスク評価手法を,いくつかの歴史的建造物が集積する町並み(国内の重要伝統的建造物群保存地区と国外の世界文化遺産指定集落)に適用した,リスク評価にあたっては,対象地域における住民の防災活動の状況や,利用可能な消火設備・水利の状況を反映した計算を行うことで,対象地域が曝される地震火災リスクの実態を評価した.次に,実態評価の結果明らかとなった問題点を解決するため,いくつかの対策を考案した.また,これらが講じられた場合の地震火災リスクについても調べることで,対象地域に適した地震火災対策を抽出した.
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