2011 Fiscal Year Annual Research Report
都市再生手法としての戦後建築の活用に向けた基礎的研究-大阪都市部を事例として-
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22760469
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高岡 伸一 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任講師 (40433320)
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Keywords | 都市計画・建築計画 / 戦後建築 |
Research Abstract |
既成市街地の再生は日本の各都市が共通に抱える大きな課題である。そして持続可能な都市の実現には、従来の再開発に代わる多様な手法が求められる。例えば今も既成市街地め多くを占める戦後復興期から高度経済成長期に建てられた建築(以下「戦後建築」)の積極的活用の推進は、その有効な手段となるだろう。しかし戦後建築については基礎調査すら十分に行われていないのが現状である。従って本研究では大阪の都市中心部を事例に、戦後建築についてまず基本的な調査を行い、その特性を明らかにした上で、都市再生における活用の有効性を明らかにする。 平成23年度は、平成22年度に実施した調査内容を元に、ふたつの観点から分析を行った。ひとつは大阪の中心市街地である北船場地区を対象に、中小規模の事務所建築を分析したところ、北船場の街区の特徴である間口の狭い敷地には、ファサードの両端に袖壁をもつ建築が多いことが明らかとなった。また大型事務所建築が高度経済成長期の短期間に建設された御堂筋沿道について分析を行ったところ、多様なデザインや色彩、素材が用いられており、表現が統一されてくるのは1980年代以降であることがわかった。 上記の結果は統一感のない雑然とした既成市街地に建つ既成市街地の建築にも、時代と立地に関係づけられた特徴がみられること、また逆に、景観的統一の取れたメインストリートとして語られることの多い御堂筋のイメージは、最近に形成されたものであり、高度経済成長期までの建築に関していえば、個性と新しい技術を競い合う場所であったことを明らかにしたことは、今後北船場地区の活性化を考える上で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は研究計画の一部を変更した。予定していた建物所有者と利用者に対するヒアリングとアンケートの実施を中断して、平成22年度に行った調査結果の分析を重点的かつ多角的に行うことを重視した。従ってヒアリングとアンケートを中段した分、研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を一部変更し、調査を行った戦後建築に関して、以下の3つの観点から研究をとりまとめる。(1)既成市街地に建つ中小規模の事務所建築の建築的な特徴について(2)御堂筋沿道に建つ大型事務所建築に関する建築的特徴の変遷に関して(3)大阪駅前市街地改造事業によって建設された4つの再開発ビルの計画変遷について。これらを最終年度である平成24年度に、論文として発表する予定である。
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