Research Abstract |
幕末から戦前に建設され100年以上を経過した民家のうち指定文化財は0.3%で,大多数は個人の管理によって維持されている。そんななか耐雪対策や家族のライフステージに合わせた増改築により,構造的な課題のあるものが少なくないことが中越地震被災後の住宅診断で明らかとなった。増改築の過程で壁量の減少,大工が経験的に構造部材を切断するなど構造的な破綻が起こっている。 本研究は伝統的な家屋が相当数残る集落をケーススタディ対象に選び,(1)耐雪対策として行った屋根形状の変化,中門の付け替え,2階の増設,減築,(2)そして家庭状況や生活様式の変化に伴う増築や改築,減築の実態を明らかにし,構造形状で類型化する。そしてさらに類型ごとに構造的な課題を抽出することを目的に研究をおこなった。 23年度は集落の各世帯に管理手帳を作成し配布した。これは集落の実情を踏まえた日常の点検項目や手入れ方法,非日常時の対応,増改築の際に気をつけるポイントを掲載し,末尾に各家が修理や増改築の履歴を記録する部分を入れている。昨年度のヒアリングでは,後継者がいないことが原因で,居住しているものの手入れがされていない状況であった。管理手帳の受け渡し時に説明を加えたところ関心を示す居住者が多かった。 また柱梁等の接合形状が多様なことが明らかとなり,それらについての指針は整理されていないことから,既往研究を精査して,差鴨居,足固め,貫,ほぞ,込み栓について現在の研究の到達点を確認した。例えばほぞに関しては寸法が仕口の性能に大きな影響を与え,込み栓に関しては,寸法や本数,打ち込み位置が影響を与えることが実験や解析で明らかにされている。これらを地震被災時の状況と対応させ,構法を評価すれば,より効果的な指針を示すことができると考えられる。 24年度は上記を踏まえて接合部を見ていくことにより精度をあげたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的であげた(1)耐雪対策として行った屋根形状の変化,中門の付け替え,2階の増設,減築,(2)そして家庭状況や生活様式の変化に伴う増築や改築,減築の実態を明らかにし,構造形状で類型化する。といった点はおおよそ掴めている。今後は構造形状の部分をより精度をあげたい。
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