2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760491
|
Research Institution | Nagaoka Institute of Design |
Principal Investigator |
梅嶋 修 長岡造形大学, 造形学部, 研究員 (20569454)
|
Keywords | 上棟式 / 幣串 / 御幣 / 幣束 / アンケート / 職業別電話番号帳 / 大工 / 棟梁送り |
Research Abstract |
和歌山県橋本市中心市街地の町並み調査及び近畿地方の大工職への聞取調査(アンケート)では、上棟式の際に複数本の幣串を作成し、この内1本を小屋裏へ納め、その他は各関係職方へ配る慣習が、少なくとも大正時代以降、当該地域に広く分布したことが確認された。本研究では聞取調査の範囲を広げ、この様な上棟式における幣串の取扱に関して日本全国の大工職に悉皆的な聞取調査(アンケート)を実施し、上記慣習の実態について以下の諸点を確認した。 1幣串の呼称は「幣串(ヘイグシ)」「御幣(ゴヘイ)」「幣束(ヘイソク)」が多数を占め、大きく関東・関西の文化圏で区分することができる。 2 31の都府県において関係職方が幣串をはじめ、弓・矢、尺棒、五色棒、五色の旗、纏等、上棟式の棟飾りを譲受けており、同慣習は全国の広い地域で行われたといえる。 3譲受けた幣串は床の間に飾る、工場に仕舞う等の回答があった。10本以上の所有は稀で、工場・自宅の建替えに伴い破棄されるか、小正月の左義長等で定期的に処分する傾向にある。 4回答者が幣串を譲受けた年代は昭和20年代~現在に至る。先代が譲受けた幣串を所有する事例もあり、同慣習は少なくとも大正時代まで遡ることができる。 5幣串は大工の他、基礎工・地業工・石工、材木屋・木挽・製材、手伝・車力・鳶、屋根・瓦屋、左官、建具屋、銅工・板金等に配布されている。 一方、職方以外の配布先も確認され、大工以外は譲受けないという回答もあり、作成本数、配布先には差異があることも窺える。 この他、自由回答として上棟式後に棟梁率いる数名の大工が棟飾り等の式具を担いで棟梁の家へ持帰り祝宴を催す「棟梁送り」の行事が挙げられた。現在、施主が祝儀を大工に渡す行為は「棟梁送り」が起源とされる。上棟式の幣串を譲受ける慣習は同行事を原形とし、時代が降るに従い簡略化が図られ、譲受けの事実のみが残った可能性も指摘される。
|