2010 Fiscal Year Annual Research Report
YBCO薄膜の磁束ピン止め研究のための制御されたナノ欠陥の作製
Project/Area Number |
22760504
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
BAGARINAO K. 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (00357758)
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Keywords | 超電導薄膜 / 結晶欠陥 / 陽極酸化アルミナ自立膜 / アルゴンイオンミリング / 臨界電流密度 / 磁束ピン止め |
Research Abstract |
人工ピン法では、超電導薄膜の最大の臨界電流密度J_cが得られるように、結晶欠陥の分布や密度を制御して薄膜中に導入することが原理的には可能であるが、実際には超電導マトリックス内部に導入された結晶欠陥の分布がランダムであり、かつ、その欠陥の寸法を制御することは困難である。一方、ナノテクノロジーにより、様々なナノ組織の作製の研究が進められている陽極酸化アルミナ(Anodic aluminum oxide, AAO)自立膜は、孔の寸法と分布が決まっているので、人工ピンを導入するために利用可能な材料と考えられる。そこで本研究では、高温超電導酸化物薄膜YBa_2Cu_3O_y(YBCO)の上に多孔性AAO自立膜を配置し、次いで、アルゴンイオンミリングを行った。アルゴンイオンミリングにより、多孔性AAO自立膜の下にあるYBCO薄膜が、孔のパターンとほぼ同様なパターンでエッチングされ、YBCO薄膜中にナノスケールの結晶欠陥が導入された。欠陥の微細構造について走査電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、及び透過型電子顕微鏡観察で調べた。AAO自立膜を用いてYBCO薄膜中に制御されたナノスケール欠陥を導入した初めての試みであり、結果として液体窒素温度(77.3K)において薄膜の単位幅当りの臨界電流(臨界面電流)を向上させることができた。特には欠陥の少ないフッ素フリー塗布熱分解(MOD)法のYBCO薄膜中にナノスケールの欠陥が導入され、元のJ_c値と比較して約70%に向上した。また、J_cの磁界角度依存性を0.1Tの外部磁界に対して、全角度においてJ_cが向上した。この結果により、低磁界に対してYBCO薄膜中にランダムピン及びab相関ピン止め中心の寄与が大きくなったことが考えられる。従来の重イオン照射より簡略な方法であり、かつ、人工ピンの分布や密度を正確に制御して薄膜中に導入することを可能である。また、AAO自立膜が破壊されるまで何回も利用ができ、効率的な方法である。
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