2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポリプロピレン/無機系ナノコンポジット材料の環境調和型調製法の確立と耐衝撃性評価
Project/Area Number |
22760521
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
棚橋 満 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (70314036)
|
Keywords | コロイダルシリカ / ポリプロピレン / 無機塩 / ナノコンポジット / ナノ粒子 / 粒子凝集体 / 分散 / 凝集 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,分散無機粒子(フィラー)の表面改質を要しない簡便なトップダウン型アプローチによる耐衝撃性に優れたポリプロピレン(PP)/無機系ナノコンポジットの創製を目指し,当初の計画を踏まえて以下の研究を実施した。 (1)PP/無機系コンポジットの結晶化挙動評価:粉末X線回折により,PP結晶相はシリカフィラーの分散の有無や分散性によらず全てα晶と同定された。さらに,熱分析や偏光顕微鏡観察から,シリカフィラーが界面近傍のPP分子鎖の運動性を拘束することで結晶化を促す造核サイトとなることが分かり,結晶化温度の上昇や結晶化開始時の結晶発生数の増加等の結晶化促進や結晶成長速度の低下を引き起こし,PP相結晶組織の微細化につながった。さらに結晶化挙動については,フィラーサイズではなくフィラー間距離に支配されることも示唆され,ナノフィラー分散によるPP結晶組織制御技術の確立に資する知見も得た。 (2)同系コンポジットの耐衝撃性評価:シャルピー衝撃試験から,粒径450nmのシリカが分散した場合には配合率が高くなるにしたがって耐衝撃性は低下し,190mmの一次粒径単位のナノ分散が達成された場合には,フィラー無添加PPよりも耐衝撃性が向上することが明らかとなった。衝撃破面観察も踏まえると,蓑面改質を施しておらずPPとの濡れ性が悪いシリカナノ粒子が分散したことにより,衝撃破面上のシリカ/PP界面でボイドが形成・成長し,衝撃エネルギーが吸収される効果と研究(1)で明らかにしたPP結晶相の微細化により,亀裂の伝播が抑制される効果が,分散フィラーが有する機械的強度低下を誘引する材料欠陥としての欠点を上回ったためであると理解された。 (3)本研究のまとめ:得られた全ての知見から,本系ナノコンポジットの耐衝撃性をより向上させるためには,無機フィラーをナノオーダーでも材料欠陥とならない分散径まで微細化して均一分散させることが重要であると示唆された。
|
Research Products
(8 results)