Research Abstract |
本研究の目的はオーステナイト単相鋼を用いて,高温引張試験を用いて,粒界の役割が強化因子から弱化因子に遷移する温度Tcとそのひずみ速度依存性を実験的に調べることである. 本研究で用いる鋼は,オーステナイト単相であるFe-20Cr-30Ni鋼(at.%)である.この鋼を用いて1200℃,1300℃の焼鈍及び前加工(冷間圧延)後1200℃焼鈍を施し,60μm,260μm,680μmの結晶粒径を持つ試料作製条件を確立した.これらの試料に対して,同一ひずみ速度(3x10^<-3>/s)において,室温における引張試験を行った.本鋼は,135~162MPaの降伏強度,414~657MPaの引張強度,45~59%の全伸びを示した.また,従来の知見通り,降伏強度及び引張強度は結晶粒径が減少に伴って増大することを確認した.なお全伸びは結晶粒径に依存しない.この結果より,室温では粒界は強化因子として作用することを確認した. また,予備実験として,高温引張試験機の温度制御条件の最適化を行った.その結果,良好な温度調節条件(P:0.8,I:60,D:100)と炉の出力(Top:30%,Middle:20%,Bottom:50%)を見出し,2時間程度の加熱後所定の温度で一定に保持できるようになった.これらの結果を基に,来年度600℃,700℃,800℃における高温引張試験(ひずみ速度:3x10^<-3>/s)を実施する.また,3x10^<-4>/s程度の低ひずみ速度の試験を行う.
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