Research Abstract |
昨年度,Ni-22Cr-8W,Ni-8W(at%)合金にて明らかにした特異な異常強化発現が,短範囲規則構造(SRO)に由来するものであることを明らかにするため,本年度はまず,Niとの2元系において二相分離傾向を示すことからSROを形成しないことが予測される:Ni-Re系に着目し,その塑性挙動の比較を行った.実際にNi-5at%Re単結晶を作製し,まずその内部組織を観察したところ,予測通りSROに起因する散漫散乱の発生は全く認められず,完全に結晶が完全に不規則γ単相からなることが確認された.この単結晶を用い圧縮試験を行ったところ,固溶体強化により,純Niと比較した降伏応力の増大が全試験温度で認められたものの,前述の2合金とは異なり,その値は温度の上昇に伴い単調に低下し,異常強化現象は発現しないことが見出された.さらにNi-Reでは応力ひずみ曲線上にセレーションの発現は見られず,流動応力のひずみ速度依存性はいずれの温度域でも正の値を示すなど,両者の間には大きな差が認められた.これらの事実はまさにSROの有無により,高温変形挙動が大きく変化することを強く実証した結果といえる.さらにこのようなSROが塑性挙動,転位運動挙動に与える影響を調査すべく,DO_<22>構造が発達するNi-25at.%V単結晶を用い,この結晶に1200℃からの高温焼き入れ,熱処理を施すことにより,規則相の析出形態がSRO,(LRO)から化合物単相へと変化するような結晶を作製し,塑性挙動の比較を行った.この結果,SRO状態では転位の運動により変形が進行し比較的低応力を示すのに対し,熱処理を施し規則構造を発達させると,変形モードが{112}双晶に変化するとともに,降伏応力が劇的に上昇することを見出した.以上のような結果より,合金中のSRO制御は,不規則固溶体合金,規則合金のいずれとも異なる塑性挙動を発現させる可能性があり,室温強度のみならず,高温強度を制御する新たな一方策となり得る可能性があることを明らかにした.
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