2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22760542
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺井 智之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 講師 (20346183)
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Keywords | 巨大磁歪 / 反強磁性 / 酸化コバルト / 強磁場 / 双晶 |
Research Abstract |
近年注目されている強磁性形状記憶合金と同様に、他の様々な化合物においてもある特定の条件(結晶磁気異方性エネルギーKuにより生じる磁気的せん断応力τmagが双晶変形に必要な応力τreqより大きい場合)を満たす場合に磁場誘起巨大歪が生じるという仮説の妥当性を証明するために反強磁性を示すNaCl型酸化物のCoOに着目し、その単結晶試料を作製してその微細組織を観察した。CoO擬正方晶相に[001]_<p3>[110]_<p1>[111]_p(pは母相を示す)方向へ10Tまでの磁場を印加して磁場中光顕観察を行った結果、[001]_p方向に磁場を印加した場合、約170Kから290Kまでの温度範囲にてt磁壁の移動に伴う磁気的かつ結晶学的なドメイン(バリアント)の再配列が観察され、10Tでほぼ単一ドメイン状態を得ることが出来た。一方[110]_pおよび[111]_p方向に印加した場合には再配列は観察されなかった。この光顕観察の結果とτmagおよびτreqの値の関係を調べるために磁化測定および引っ張り試験を行い、それらの値を評価した。その結果、[001]_p方向に磁場を印加した場合、100Kにて(001)_p面上に最大約3MPaの磁気的せん断応力が生じ、温度の上昇とともに減少すること、[110]_p方向に印加した場合は[001]_p方向の値の半分になること、[111]_p方向に印加した場合には応力がゼロになることがわかった。一方、双晶変形応力は約80Kにおいて6MPaであるが、温度の増加とともに急激に減少することがわかった。これらの値と光顕観察の結果を比較すると、τ_<mag>>τ_<reg>を満たす場合に常にドメインの再配列が生じることがわかり、このことから上述の仮説の妥当性が定量的に確かめられた。このことはCoOのtetragonalityを考慮すると磁場の印加により、現用の超磁歪材料(Terfeno1-Dなど)の数倍の歪を磁場印加により制御できることを示している。さらに現在研究がなされている強磁性形状記憶合金以外にも反強磁性を示す酸化物やMn-Cu合金のような合金においても同様の巨大磁歪を示し得ることを強く示唆している。
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