2010 Fiscal Year Annual Research Report
トリチウムプロファイリングによる応力負荷した金属材料中の水素集積メカニズムの解明
Project/Area Number |
22760545
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大塚 哲平 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助教 (80315118)
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Keywords | 水素脆性 / トリチウム / オートラジオグラフィ / イメージングプレート / 応力 |
Research Abstract |
鉄鋼材料の水素脆性は、鋼中を移行する水素が水素捕獲サイトに捕獲され、局部に高濃度化することによって引き起こされると言われている。過去に報告された鋼中の水素捕獲サイトのうち、非金属介在物や第二相析出物はもっとも強い水素捕獲サイトであるとされ、しばしば水素脆性の原因とされている。しかしながら、これらの介在物・析出物が鋼中の水素をどのように捕獲するのかは明らかではない。本研究では、高周波誘導加熱炉による溶解法でαFe母材中に金属または金属化合物粒子を分散させた擬二元系合金を作製し、αFe中の金属化合物粒子周辺の水素分布をトリチウムオートラジオグラフィにより調べた。 合金に水素を導入してから7時間経過後、αFe母材中では水素はほとんど観察されず、母材から速やかに水素が放出されたことが示唆された。母材中にアルミニウム酸化物(Al_2O_3)粒子を含む合金では、母材とAl_2O_3粒子との界面にのみ高濃度の水素が観察された。一方、αFe母材中にクロミウム炭化物(Cr_3C_2)粒子を含む合金では、Cr_3C_2粒子の内部、界面のみならず、界面からやや離れた母材領域で水素濃度が高い様子が観察された。 Al_2O_3の水素溶解度は極めて低いため、観察された水素はAl_2O_3/αFe母材の界面に強く化学吸着したものか、またはAl_2O_3とαFe母材との熱収縮率の違いにより生じた歪みや欠陥に捕獲されたものであることが示唆される。一方、Cr_3C_2は水素を溶解することが示唆された。しかし、Cr_3C_2が母材中の水素を惹きつけているのか、それともCr_3C_2から母材へと水素が供給されたのかは明らかではない。 本研究は、金属化合物粒子の水素溶解度(水素親和力)によって、母材中の水素分布に違いが見られたという点で意義深い。今後、水素溶解度や拡散係数が既知の金属・金属化合物粒子を分散させた合金を用い、定量的な水素分布の時間経緯を調べる必要がある。
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Research Products
(6 results)