2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ組織構造化による銅合金の熱・電気物性の飛躍的向上
Project/Area Number |
22760558
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 久志 大阪大学, 接合科学研究所, 特任研究員 (30452379)
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Keywords | 銅粉末 / CNT / 単分散 / 熱・電気特性 |
Research Abstract |
純銅をマトリックスとして,CNT分散被覆し,その粉体固化成形によって熱電気特性に優れる材料作製を試みた.まず,本研究での手法を利用することで,水素熱処理を施した粉末においては,分散液の固形成分は確認されず,CNTのみが分散付着する,CNTの水素熱処理前後のTEM観察を行なった結果,熱処理前後でMWCNT特有の多層壁を確認しており,ラマン分光分析結果からもCNTの構造に変化がないことを示した.よって,Cu/CNT複合材料を創製するにあたり,機械的性質ならびに熱・電気伝導性の低下要因となる固形成分は,CNT付着粉末の水素熱処理の工程で除去できるものと考えられる.CNTを含む押出材においては,結晶粒が微細になる傾向にあり,湿式プロセスによって得られた押出材の結晶粒径が最も微細で平均結晶粒径2.35μmとなった.高ヤング率を有するCNTが押出材内部に均一分散することにより,押出加工中にCNTの存在部分でひずみが蓄積されて動的再結晶が促進する.CNT単純混合押出材については,引張強度・伸びともに純銅粉末押出材に比べて同等あるいは低下する傾向にある.他方,本研究にて得られたCNT分散付着銅粉末を用いた押出材においては,耐力値が約120MPaとなり純銅粉末押出材の1.3倍となった.組織観察結果からも,CNTが均一分散することによる結晶粒微細化効果および高強度CNTの分散強化によって,耐力値が増加したと考えられる.他方,最大応力に関しては,低下する傾向にある.炭素とCuとの濡れ性が悪いことが知られており,本研究によって得られた材料の塑性変形領域においては,結合強度が最も低いCu-CNT界面より亀裂が進展するものと考えられる。本研究で得られるCNT単分散付着粉末を用いた材料では伝導率の向上が期待されたが,実験の結果からは,添加量の増加とともに低下する傾向となった.CNT添加材料の熱伝導性の向上には,界面における結合が必要であると考えられる.
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