Research Abstract |
軟磁性材料は,磁気記録装置の磁気ヘッドや,トランス,モーター等の磁心として広く活用されている.軟磁性材料に要求される特性として,高飽和磁束密度(高Bs)と低保磁力(低Hc)が特に挙げられる.高Bsと低Hcの両立を目指した取り組みとして,結晶粒微細化により保磁力(Hc)が低下するという報告がなされている.結晶粒を微細化していくと,結晶粒子間に働く交換相互作用により結晶磁気異方性が平均化され磁気異方性が抑制・低下し,Hcが低下する.しかし,Fe系軟磁性材料の結晶粒微細化には合金元素の添加が広く用いられるが,Fe系軟磁性材料のBsはFeの含有量に左右されるため,合金元素の添加によりFe含有率の低下と共にBsも低下してしまうという技術的課題が存在する. 著者は,新しいコーティング法として超音速フリージェットPVDを提案・開発している.本法は,生成直後の活性なナノ粒子を超音速ノズルにより生起する超音速ガス流により高速に加速,基板に衝突堆積させることで膜形成する技術である.ナノ粒子の堆積により膜形成させるため,本法により形成される皮膜は,ナノ結晶粒を呈する. 本研究は,超音速フリージェットPVDによりナノ結晶Fe膜を形成し成膜条件が及ぼす磁気特性への影響,およびFe膜とAl基材間の密着性を評価検討することを目的とした. 超音速フリージェットPVDによりFe膜を成膜し,膜組織と結晶構造,磁気特性,密着性を評価した結果,結晶粒径が~16nm程度の緻密で欠陥の無いナノ結晶Fe膜が形成可能であること,Al基板との高い密着性を有していることを明らかとした.磁気特性は,成膜条件によりHcの値に差異が生じることが確認され,本研究において最も優れた軟磁気特性示したFe膜では,保持力の平均がHc=32.6A/m,飽和磁束密度の平均Bs=2.2Tであり,優れた軟磁性特性を有していることが明らかとなった.
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