2010 Fiscal Year Annual Research Report
合金中のナノ欠陥定量解析システムを目指した新たなX線散乱測定システムの構築
Project/Area Number |
22760572
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 成男 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40509056)
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Keywords | X線回折法 / ラインプロファイル解析 / ミクロ組織解析 / 転位密度解析 / 双晶誘起塑性鋼 / 析出強化型合金 / 時効硬化 / 集合組織 |
Research Abstract |
合金中の転位、小傾角粒界、セル構造を定量的に解析する高輝度・分解能可変型X線散乱測定システムを開発した。このシステムの特徴は、ナノオーダーの結晶欠陥(転位、積層欠陥、双晶等)をメートルオーダーの視野で迅速かつ定量的に解析できる点にある。 平成22年度は装置開発と性能評価からスタートし、「課題1:低積層欠陥エネルギーを持つ合金の加工に伴う組織変化」、「課題2:析出強化型合金における析出物形成と転位の関わり」をテーマとした研究を進めた。 課題1:合金の積層欠陥エネルギーに対する加工組織への影響を定量的に解析した。特に高マンガンオーステナイト鋼およびCo-Cr系合金を対象試料とした。これら合金は低い積層欠陥エネルギーにより双晶形成が進展しやすく、同時に合金組成により積層欠陥エネルギーを変えることができる。圧延、引張変形に伴う転位密度や積層欠陥の形成頻度の変化とそれらに対する積層欠陥エネルギー依存性に関する知見が得られつつある。また、加工により複数の集合組織成分が形成されるが、極点図測定を組み合わせたラインプロファイル測定により個々の集合組織ごとの転位密度、セルサイズの変化を解析することが実現した。 課題2:析出強化型銅合金を対象に、転位が与える析出物形成・成長への効果を探った。時効に伴う母相の回復現象は、結晶方位ごとに異なり、通常のラインプロファイル解析ができない。そこで、特定の結晶粒群だけの回折を抽出する測定を行った。その結果、結晶中の転位による歪み関数を導出することに成功し、時効に伴う転位の再配列挙動を定量的に解析することに成功した。 以上の研究成果は材料組織解析の基盤技術の進展に貢献し、同時に、新たに得られた知見から、先端的な合金材料に対する材料開発指針につなげられた。
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