Research Abstract |
H22年度までの研究成果により,パラジウムをシリカ前駆体である珪酸エチル(TEOS)加水分解の段階で添加することで,アモルファスシリカ内にパラジウムを高分散,あるいはシリカとの複合化が可能であることが明らかになった。また膜構造をTEMにより評価したところ,アモルファスシリカ内に8nm以下のPdが高分散したMixed-matrix構造であることが明らかになり,SiO_2膜と比較して水蒸気安定性を有している可能性が示唆された。 H23年度はパラジウム添加率が,水素透過率,水素選択性,製膜性に及ぼす影響について検討を行なった。Pd-SiO_2膜(Si/Pd=3/7,2/8,1/9(モル比))は,H_2/He透過率比が1よりも大きくなった。一般にシリカ系水素分離膜では,分子ふるいが気体透過メカニズムであるため,分子サイズが小さいHe(d_m=0.26nm)がH_2(d_m=0.289nm)よりも透過率が大きくなる。本研究で開発したPd-SiO_2膜は,パラジウム添加率が増加するにつれて,Pd粒子による水素透過パスが発現し,H_2/He透過率比は大きくなったと考えられる。Pd-SiO_2膜(si/Pd=1/9)は最大で3.7を示した。一方で,パラジウム添加率が大きくなるほど製膜後,水素透過に対する安定性に欠ける傾向が確認された。これは,水素透過に伴い水素との分離対象である,N_2透過率が増加し水素選択性が低下するもので,TEMにより水素透過前後のゲル粉体試料の評価を行なったところ,製膜直後はアモルファスシリカ内に高分散していたパラジウムが,水素透過により移動・凝集していることが明らかになった。今後は水素透過に対してパラジウムの移動・凝集を抑制するために,製膜プロセスの最適化を図る必要がある。
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