Research Abstract |
アルギン酸は海藻由来の多糖であり,二つの単糖(マンヌロン酸:M,グルロン酸:G)によって構成されている.アルギン酸の物性は分子量および糖鎖内のモノマー組成(M/G)およびMGの配列に依存する.アルギン酸は優れたゲル特性を有し,保湿性,粘性,生体分解性,イオン交換性から,ドラッグデリバリーデバイス,ゾル・ゲル応答性ポリマーなど次世代の機能性ポリマーとしての期待されている.これらの機能ポリマーの実現には,目的・用途に合った分子量やモノマー比の揃ったアルギン酸が必要であるが,現状では原料海藻類を用途で変え,抽出・選別が行われている程度で,精密なビルディングブロックの生成に至ってない.従来検討されているアルギン酸の分解法には,酵素法,強酸や強塩基を用いる加水分解法,過酸化水素を用いる酸化分解法などがあげられるが,触媒添加の必要性や反応時間が長いなどの課題から未だプロセス化に至っていない.また,高速反応の観点から超臨界水による分解も検討されたが,高い反応温度(400℃)から過分解が生じ,処理後のアルギン酸は工業的利用が困難な低分子量10^3g/mol以下への変換が主であった.本背景を受け,反応場の圧力増加によるアルギン酸の自己触媒化(触媒の添加を必要としない)と反応温度減少(300℃以下)による過分解反応の抑制がカギだと考え、本研究ではアルギン酸を熱水中で温度(~300℃),圧力(~100MPa)で,一秒程度の高速加水分解を行い,分子量,モノマー組成と反応因子の関係を解明し,反応速度的評価を行った。アルギン酸の加水分解の反応速度は圧力増大に伴い、増大し、本反応条件により、工業的に有用である分子量10^3g/mol以上の分子量への制御に成功した.圧力増大に伴う加水分解速度の増大は高圧によるアルギン酸の酸解離による自己触媒作用であることが示唆され、圧力操作のみによる触媒の添加を必要としないプロセスを提案した.
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