2010 Fiscal Year Annual Research Report
“超吸着種”概念に基づく高温不均一表面反応機構の新規構築法開発
Project/Area Number |
22760589
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小倉 鉄平 九州大学, 稲盛フロンティアセンター, 特任助教 (90552000)
|
Keywords | 反応機構 / 不均一表面 / 量子化学計算 / 水素製造 |
Research Abstract |
本研究は、新しく考案した"超吸着種"概念を用いて局所表面構造を包含した高温不均一表面反応機構構築手法を開発し、具体的に水素製造技術へと応用し工業的実条件におけるNi触媒上での炭素析出反応機構を解明することが目的である。研究初年度である本年度は1)局所表面構造を包含した吸着モデリング技術の開発、2)振動解析を用いた高精度表面動力学論の展開、を実施した。吸着モデリング技術の開発においては、プロトタイプとなる局所構造上においてメタン水蒸気改質で生成する中間吸着種及びその反応遷移状態について量子化学計算を行った。具体的にはアドアトム(金属原子が一つだけ表面上に突出した形状)、擬ステップ、擬キンクの3種の局所構造を考慮し、超吸着種概念を用いてそれら局所構造を組み込んだプロトタイプ表面反応機構を構築した。以上の技術開発により、表面配列の不規則性、吸着による安定化エネルギーを組み込んだ包括表面エネルギーといった実験から得られにくい重要な情報を反応シミュレーション内で取り扱うための基盤が整備された。一方、高精度統計熱力学論の展開においては、高温における吸着種の高運動性を正確に記述するために、吸着種内運動だけでなく吸着種の回転・2次元並進に相当する運動自由度に関しても振動解析を行った。統計熱力学論に基づき"抑制された回転・並進"として、振動解析結果と別に計算した拡散の障壁高さから反応平衡定数・反応速度を算出した。これらの理論展開により、実験が困難な高温反応場においても理論的に精度の高い熱力学・速度論データの取得が可能になった。なお、平成23年3月に電気化学会第78回大会に参加し開発した吸着モデリング技術に関する専門家との意見交換を行う予定であったが、震災の影響により参加が不可能になったため、その部分に関して研究計画を遅延し平成23年9月に開催された化学工学会第43回秋季大会において意見交換を行った。
|