2011 Fiscal Year Annual Research Report
液晶性微小カプセルを利用した生体高分子デリバリーシステムの開発
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22760613
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
黒岩 崇 東京都市大学, 工学部, 准教授 (60425551)
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Keywords | ドラッグデリバリー / マイクロカプセル / 生体高分子 / マイクロ・ナノデバイス / マイクロバイオプロセス |
Research Abstract |
平成23年度は、初年度に開発した液晶性微小カプセルの作製方法において、種々の操作因子が水溶性物質の内包効率やカプセル径に及ぼす影響について検討し、生体高分子を高効率で内包した液晶性微小カプセルを得るための技術的基盤となる知見を得ることを目的とした。まず、カプセルのテンプレートとなるwater-in-oil-in-water型(W/O/W)多相エマルションの作製に利用する乳化剤種の影響について調べた。その結果、W/O/W多相エマルションの外部水相に添加する乳化剤の種類が、得られるカプセルへの水溶性物質の内包効率に顕著な影響を及ぼすことを明らかにした。初年度に利用していたカゼインナトリウムに加えて、アルブミンおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどの高分子乳化剤を用いた際には水溶性分子であるカルセインに対して70~90%の高い内包率が得られたのに対し、低分子乳化剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートを用いた場合にはカルセインの内包率は30%程度にとどまり、本法において使用する乳化剤としては高分子系の乳化剤が適していることが示唆された。続いて、カプセル作製の第1段階で得られるwater-in-oil型(W/O)エマルション中の微小水滴のサイズを変化させてW/O/W多相エマルションを作製し、これをテンプレートとして微小カプセルを作製した。その結果、平均径約1.7μmの水滴からは平均径約1.1μmのカプセルが、また平均径約200nmの水滴からは平均径約200nmのカプセルが得られ、カプセル作製に用いたW/O型エマルションの水滴径が最終的に得られるカプセルの大きさに反映されることが示された。以上、本年度の検討により、生体高分子を内包化した液晶性微小カプセルの作製において、「内包効率の向上」と「カプセルのサイズ制御」の2つを実現するための工学的指針を与える有意義な成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究の開始時に目的とした乳化剤の添加効果の検討については、「9.研究実績の概要」でも述べた通り、液晶性微小カプセルへの水溶性物質の内包率向上につながる有用な知見を得ることができた。さらに、内包効率の向上とともに重要なカプセル径の制御に関する有用な知見も得ることができた。カプセルの形成メカニズムの解明とカプセルの作製効率との関連性については引き続き詳細な検討を要する段階であるが、多相エマルションにおける内包物質の漏出過程がポイントであることが明らかになりつつある。以上の進捗状況を踏まえて、これまでの研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、液晶性微小カプセルへの生体高分子の効率的な内包化に向けて、カプセル作製過程における内包物質の漏出メカニズムの詳細な把握が重要と考えられる。現段階では、W/O/Wエマルションからの油相溶媒の除去工程における漏出が最も顕著であることを示唆する結果が得られており、漏出を抑制する手法の開発が望まれる。そのための具体的な方策としては、(1)減圧・加温などによる油相溶媒の除去に要する時間の短縮、(2)油相中に溶解している水および親水性成分量の把握と制御、が挙げられる。同時に、操作条件の制御のためにカプセル作製に用いる各種成分の物性の詳細な把握も必要と考えられる。これらの知見を土台として、実際の生体高分子の効率的内包化条件について検討していく予定である。
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