2011 Fiscal Year Annual Research Report
深海底での微生物腐食:誘因微生物叢と腐食機序の解明
Project/Area Number |
22760646
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
牧田 寛子 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, ポストドクトラル研究員 (40553219)
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Keywords | MIC / 微生物腐食 / 微生物 / 深海底 / 腐食 / 金属 / 鉄酸化細菌 / 硫化水素 |
Research Abstract |
本研究では、深海底という海洋環境をモデルに微生物生態学、生化学および電気化学的手法を用いて、微生物による金属腐食の分子的機序を解明する事を最終目的としている。本年度は、直接的および間接的に金属腐食をもたらす微生物の集積培養および単離に力を入れた。 昨年度までの成果によって、深海底に存在する天然の腐食地帯と考えられる鉄酸化物被膜地帯には鉄と酸素をエネルギー源として生育する微生物や硫黄化学種を利用して生育しその過程で硫化水素を発生させる微生物が繁茂していることが明らかとなった。これらの微生物の生理・生態を解明する事は、金属腐食をもたらす微生物の生態を明らかにする上で重要と考えられたため、鉄酸化物被膜地帯の試料を植種源として、バッチ式での培養およびフロー型の培養装置を用いた培養を開始した。フロー型の培養装置を約半年間稼働させた後に、微生物叢の確認を行ったところ、鉄酸化および鉄還元に関する微生物の集積培養に成功している事が明らかになった。なお、フロー型培養槽内で確認された微生物叢は、バッチ式培養とは全く異なる微生物叢である事が確認された。一方、バッチ式での培養によって硫化水素を発生させる新属新種の細菌の単離に成功した。さらに、鉄を酸化させる新種の細菌についてもバッチ式培養法によって集積培養が成功し、現在単離作業を進めている。また、腐食の評価手法として放射光X線解析を用いる事とし、まずは鉄酸化細菌由来の鉄酸化物と天然の腐食地帯の鉄酸化物との比較を行った。その結果、微生物腐食の原因微生物種を知る上でも有効な手段であることを確認するとともに、両者のスペクトルが非常に類似している事を明らかにした事で、天然の腐食地帯における鉄酸化細菌の現場環境に及ぼす影響についての知見も得る事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的である深海底への金属片の設置および設置環境での微生物調査を実施できた事、フロー型の微生物培装置の稼働を開始出来た事、腐食に直接的および間接的に関与する微生物の単離および集積培養に成功した事などから、おおむね順調に進展していると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は研究計画最終年度であり、これまでに各地の深海底に設置・回収した金属片からの微生物叢と、設置場所に生息している微生物叢との比較を行い金属腐食に普遍的に関わる微生物を明らかにする。また、現在集積培養が成功している新種の鉄腐食菌の単離を試みる。さらに単離および集積培養に成功した微生物を用いて腐食実験を行い、これまでの研究計画で得られたすべての結果を総合して、深海底での微生物腐食のメカニズムについての検証を進めてゆくとともに、成果の取りまとめ及び発信を行う。
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Research Products
(5 results)