2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子鋳型を用いた錯形成のエナンチオ選択性制御と隣合うランタノイドの相互分離法開発
Project/Area Number |
22760655
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小林 徹 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 任期付研究員 (40552302)
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Keywords | ランタノイド / 相互分離 / イオン認識 / エナンチオマー / 分子鋳型 |
Research Abstract |
N-alkyl-N-phenyl-1,10-phenanthroline-2-carboxamide(PTA)は、ランタノイドとの錯形成において、周期表上のある元素を境目にして、互いに重なり合わないキラルな関係にある錯体を形成し結晶化する。本研究は、この差を利用して錯体を互いに分離することにより、特定ランタノイドを高選択的に単元素分離できる革新的分離概念を構築することを目的としている。本年度の研究ではまず、ランタノイドに積極的に配位するものの、ある1種の鏡像体のみが配位可能な空間を与える分子、すなわち不斉炭素などを有する化合物を"分子鋳型"とするなどして錯形成・結晶化の選択性を制御するという方法論を用いたランタノイド分離法について検討した。その結果、NdとEu及びMePhPTAを含む溶液に分子鋳型として光学活性単座配位アミンを添加することにより、Eu錯体のみを高選択的に沈殿させることに成功した。EuとNdの分離係数は約15であり、溶媒抽出法など従来の分離法による分離係数を大きく上回っている。また、本年度の研究では、鏡像体を形成する境界の制御方法についても検討した。MePhPTAのフェニル基をアルキル基で化学修飾したPTA誘導体、すなわち、電子供与性がより大きい置換基を有し、その電子供与に伴う電荷反発の効果により配位元素間距離がより大きくなると期待されるPTA誘導体を合成し、ランタノイドとの親和性について検討した結果、よりイオン半径の大きいランタノイドに対して高い親和性を示すことが明らかとなり、PTAの配位元素間距離を制御することにより鏡像体を形成する境界を制御できる可能性が示唆された。境界が異なる数種のPTA誘導体を用いてランタノイドを段階的に分離することができれば、高効率に単一のランタノイド元素を分離・回収できる分離技術を構築できると期待される。
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