2011 Fiscal Year Annual Research Report
水化学における放射線誘起ラジカルの水・固体酸化物界面での特異な反応過程の解明
Project/Area Number |
22760677
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
熊谷 友多 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究職 (70455294)
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Keywords | 放射線効果 / 水溶液 / シリカ / 海水 / ゼオライト / OHラジカル / 水和電子 / 水素 |
Research Abstract |
本年度は、水和電子について固体酸化物共存下での反応を調べた。水和電子は水の放射線分解で生じる生成量の多い還元性活性種である。短パルス電子線照射・時間分解吸光法により、ナノサイズのシリカコロイド共存下での水和電子の反応を時間分解で測定した結果、シリカコロイド共存は水和電子の反応挙動に顕著な影響を与えないことが分かった。したがって、放射線によるラジカル反応過程へのシリカの共存の影響には、前年度に観測したOHラジカルの捕捉反応の寄与が大きいと考えられる。 また、福島第一原子力発電所事故では、汚染水の処理のためゼオライトが使用された。ゼオライトは多孔質固体酸化物である。使用済みゼオライトから残留水分の放射線分解で水素が発生することは、スリーマイル島事故の経験から知られていた。そこで、原子力工学における重要な放射線誘起反応として、水とゼオライトとの混合物の放射線分解による水素発生について調べた。純水とゼオライトとの混合物では、ゼオライトの添加により、より正確にはゼオライト重量分率の増加、水の重量分率の低下に従い、水素発生量の増加が観測された。また、福島第一原子力発電所の汚染水には海水成分が多量に含まれることを踏まえ、海水とゼオライトとの混合物についても調べた。海水にはOHラジカルと反応性の高い溶存種が含まれる。海水の場合には、ゼオライトの添加により水素発生量は減少した。純水と海水との間でのゼオライト添加効果の差異は、前年度観測したクロムの還元に対するシリカゲル添加効果がOHラジカル捕捉試薬の添加で阻害されたことと定性的に一致する。そのため、水素発生に対するゼオライトの添加効果は、主として水素とOHラジカルとの反応の阻害と考えられる。また、海水混合物での水素発生量の減少から、放射線によるゼオライトへのエネルギー付与は、水への付与に比べて水素発生の効率が低いことが分かった。
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Research Products
(6 results)