2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンと多機能性転写因子による染色体現象の統合的制御機構
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22770003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 貴富 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (30451850)
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Keywords | ヒストン / 染色体 / 多機能性転写因子 |
Research Abstract |
複製、転写、組換えなどの染色体DNA関連現象群は全て生命活動を根幹から支えており、適切な反応が適切な状況において起こるよう統合的に制御されている。私は、その制御機構を明らかにすることを目指し、分裂酵母のヒストンとAtf1-Pcrlとよばれるタンパク質に注目して研究を行っている。前者は最も主要な染色体タンパク質であり、後者はATF/CREBファミリー転写因子からなるヘテロダイマーで転写や相同組換え等複数の現象を制御する多機能性DNA結合転写因子である。本研究では、それらが特に転写と組換えを活性化する際の分子的特徴や役割を明らかにする。 (1)Atf1-Pcrlの機能部位の解析 前年度作製したAtflの転写活性化ドメイン(TAD)の欠損株(TAD△株)の表現型を解析した。その結果、TAD△株では、酸化ストレス等の環境ストレスへの感受性がやや昂進すること及びストレス応答に際しての転写プログラムの調節に部分的な異常を示すことがわかった。また、Atf1依存的な減数分裂期相同組換えが部分的に低下することが明らかになった。これは、TADが複数の現象に機能すること、及び他の要素の関与もすることを示している。 (2)Atf1-Pcrl結合部位周辺でのヒストン修飾 転写を活性化するAtf1-Pcrlのヒストン修飾への影響を調べた。そのため、酸化ストレスに曝された細胞で、Atf1依存的に転写が活性化されるcttr遺伝子のプロモーター付近に注目した。その結果、転写が活性化される際に特徴的にヒストン修飾パターンが明らかになった。これは、前年度に明らかにした、Atf1-Pcrl依存的なホットスポット周辺におけるピストン修飾とは異なるものであった。 各修飾の転写や組換えへの影響を調べるため、修飾導入酵素の変異体、ヒストンの非修飾残基の変異体を作製した。現在、これらの表現型解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの計画については、交付申請書に記載した実験計画どおりに進行している。興味深いヒストン修飾を導入すると考えられる酵素の候補が複数存在し、当初予定した変異体解析が困難なケースにも直面したが、ヒストンに変異を導入することでその困難を回避している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、Atf1-Pcr1の多機能性について解析を進めるが、得られた知見の一般性についても検証を行いたい。このため、ゲノムワイドでの解析も積極的に導入するようにする。既にいくつかの実験については予備実験を終え、興味深い結果を得ている。 これまでにいくつかの変異体の作製を完了している。今後はこれらの解析に重点をおき、できるだけ多角的に検討することを心がける。
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