2011 Fiscal Year Annual Research Report
捕食者-被食者系の形質間相互作用とその進化学・生態学的意義
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22770011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岸田 治 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (00545626)
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Keywords | 表現型可塑性 / 誘導防御 / 誘導攻撃 / 両生類 / エゾサンショウウオ / エゾアカガエル / オタマジャクシ / 捕食 |
Research Abstract |
個体の形質変化の進化学的・生態学的意義を理解するためにエゾサンショウウオ幼生(以下サンショウウオ)とエゾアカガエルのオタマジャクシ(以下オタマ)を中心とする池の群集をモデルとして2つの実験研究を行った。 1.捕食者の形態変化の生態学的意義 サンショウウオの表現型可塑性による大顎化が同種と餌種に及ぼす影響を明らかにするため、20m×15mの野外池に0.8×0.8×0.6mの囲い網を16基設置し実験を行った。餌種のオタマを250尾ずつ全ての網に入れたのち、8つの網には大顎化したサンショウウオを5尾入れ(大顎区)、残り8つには大顎化させなかった普通の個体を同数入れた(普通区)。3ヵ月にわたる実験の結果、普通区に比べて大顎区では、オタマが捕食されて減ることで、変態したカエルの数は少なくなったが、大きなサイズで変態することがわかった。また、普通区に比べて大顎区のサンショウウオは短期間で変態し、サイズも大きかった。両生類の変態後、網内に定着していた無脊椎動物相を調査したところ、大顎区のほうが、普通区よりも種数と個体数ともに多かった。本研究により、捕食者の表現型可塑性には捕食者と被食者の数と生活史、さらには群集にまで影響する可能性があることが示された。 2,捕食者の形態変化の進化学的意義 捕食者の表現型可塑性が被食者の防御形質の維持と進化に与える影響を検証するために、大顎のサンショウウオがいる水槽と、普通のサンショウウオがいる水槽とで、オタマの生存が個体の防御レベルに依存するかを実験的に調べた。結果として、サンショウウオが普通の場合には、防御の程度によらずオタマはほとんど食われなかったが、大顎の場合には、あまり防御していないオタマがよく食われ、強く防御したオタマは食われなかった。このことから、捕食者の可塑性には被食者の防御形質に対する選択圧の時間的・空間的変異をもたらす働きがあることが確かめられた。
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Research Products
(9 results)