2010 Fiscal Year Annual Research Report
送粉動物の認知学習および空間利用行動から見た花色変化の適応的意義
Project/Area Number |
22770012
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大橋 一晴 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (70400645)
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Keywords | 種間関係 / 進化生態 / 行動生態 |
Research Abstract |
筑波実験植物園内のハコネウツギ(花が咲き終える前に色を変える)とタニウツギ(色を変えない)の調査から、両種の花はいずれも開花後4日が経過すると著しく蜜生産を低下させることがわかった。また、蜜生産の低下と花色変化がほぼ並行して起こるハコネウツギでは、訪花昆虫が古くて蜜を出さなくなった花を避ける一方、蜜生産が低下しても花色が変わらないタニウツギでは、訪花昆虫がどの花もほぼ同じ頻度で訪れることがわかった。これらの結果は、色を変えてポリネーターに古い花を識別する手がかりを与えるハコネウツギにたいし、タニウツギは、古い花の蜜生産を低下させてもポリネーターに識別の手がかりを与えない「だまし」をおこなっていることを示唆する。こうした戦略のちがいが両者の送受粉パターンと種子生産にどのような差をもたらすか、目下データを解析中である。 また、茨城県つくば市内で224種を対象におこなった野外調査から、花が咲き終えるまでに(昆虫の眼から見えるUV域も含めた)色を変えるタイプの植物は、全体の26%を占めることがわかった。これは、たとえば被子植物全体に占める風媒花の割合の約2倍にもおよぶ値であり、花色変化がけっして稀な形質ではないことを示す興味深い結果である。さらに、ハナバチ類に送受粉を依存する植物種では、他のタイプのポリネーターに送受粉を依存する種にくらべ、花色変化の量が有意に多い傾向が見られた。この結果は、花色変化がハナバチ類による送受粉への適応として進化したことを示唆するものであり、研究代表者が考案した新しい仮説("花色変化は空間学習が得意な昆虫への適応形質")を支持する。以上の成果は23年度に種生物学会和文誌(査読中)および投稿論文として発表予定である。
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Research Products
(4 results)