2010 Fiscal Year Annual Research Report
樹冠における当年葉間の窒素移動様式と移動機構の解明
Project/Area Number |
22770018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 実希 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 研究支援者 (70570315)
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Keywords | 窒素 / 樹冠 / 安定同位体 |
Research Abstract |
植物の樹冠内における窒素の移動がどのように制御されているのかを明らかにするため、昨年度に引き続き、窒素の安定同位体を指標として用いた標識試験をおこなった。 日本に広く分布するQuercus属の落葉樹であるコナラの苗木を材料として、当年葉を安定同位体で標識した後、移動パターンを追跡した。さらに、当年葉間で移動する窒素と根から新たに吸収されて葉に配分される窒素の葉の形成への寄与を明らかにするために、根からの安定同位体吸収試験を合わせて行った。この際、土壌中の窒素可給性の違いが樹冠内の窒素移動に与える影響を明らかにするために、実験を高窒素施肥環境と低窒素施肥環境の2種類に分けて行った。 その結果、当年葉間でやり取りされる窒素量は、根から吸収される窒素よりも大きく、この傾向は特に低窒素施肥個体で顕著であった。当年葉間で移動した窒素量は、高窒素施肥個体では、根から吸収された窒素量の最大50倍であり、低窒素施肥個体では1000倍にも及んだ。このことは、当年葉間で行き来する窒素が量的には根から吸収される窒素よりも重要であることを示しており、植物は野外で限られた窒素を体内で効率よく使いまわすことで節約していることを示唆している。さらに、これまでの樹冠内での窒素移動に関する先行研究では、一方向の移動のみを主に扱ってきたが、本研究では当年葉間で双方向に窒素移動が起こることを示した。このことは、樹冠内の窒素配分を決める様式を明らかにする上で重要な発見である上、植物全体の窒素利用戦略を知る上でも役立つものである。
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Research Products
(3 results)