2010 Fiscal Year Annual Research Report
超深海に固有の生物相はあるか?:海溝周辺の小型底生生物群集の空間変異
Project/Area Number |
22770022
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
嶋永 元裕 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 准教授 (70345057)
|
Keywords | 海洋 / 生態学 / 群集 / メイオファウナ |
Research Abstract |
全長4万km以上に及ぶ海溝やトラフなどの"沈み込み帯"の小型底生生物(メイオファウナ)の群集構造は,ほとんど分かっていない.本研究では,日本周辺の沈み込み帯のうち,千島海溝,南海トラフ,琉球海溝周辺海域において,メイオファウナの優占分類群の1つである底生カイアシ類の群集構造の空間変異の解積を試みた. 琉球・千島海溝周辺については,堆積物コアサンプル採集が行われた計30測点の内,24測点の堆積物中のカイアシ類の属レベルまでの解析が終っている.水深6,000m以深の測点を"海溝",海溝より陸側の測点を"大陸斜面",海側の測点を"大洋底"と分類して多変量解析を行った結果,海溝に固有な属は存在せず,両海域とも海溝の群集構造は大陸斜面や大洋底のそれと全く異なる訳ではないが,属の存在比率が異なること,海域間の群集構造を比較すると,大陸斜面同士の群集の類似度に比べて,海溝同士,大洋底同士の類似度は低く,海溝及び大洋底群集の独立性が大陸斜面に比べて高いことが示された. 南海トラフ周辺に関しては,全8測点(水深570-4900m)から採集された堆積物中のカイアシ類の抽出・計量を終えた.カイアシ類の個体数は水深約570mの最大値(約58個体/10cm^2)から水深に沿って急激に減少し,2000m以深では,約11個体/10cm^2で安定した.この値は,富栄養海域に横たわる千島海溝付近の同程度の水深幅(2000-5000m)における海底堆積物中の密度(約11個体/10cm^2)と貧栄養海域の琉球海溝周辺で観察された密度(約4個体/10cm^2)との中間値であった.この値は,海域間の一次生産量の差を反映していると考えられた.
|