Research Abstract |
本研究の目的は,日本周辺の沈み込み帯のうち,千島海溝,南海トラフ,琉球海溝周辺海域におけるメイオファウナの優占分類群の1つである底生カイアシ類の群集構造の把握である.本年度は,前年度の研究成果を踏まえ,琉球・千島海溝周辺については属レベルの群集構造,南海トラフに関しては科レベルの群集解析を試みた. 琉球・千島海溝周辺については,白鳳丸KH01-2及びKH05-1航海,淡青丸KT09-7及びKT10-23航海で採集されたサンプル計31測点の内,27測点の解析が終っている.ソコミジンコ類の成体1,500個体を属レベルまで同定したところ,琉球海溝で64属,18科(246個体),千島海溝で79属,17科(1,254個体)が出現した.琉球海溝周辺域では,ソコミジンコ類の多様性は水深と共に減少した.一方,千島海溝周辺域では,水深2000~3000mまでは上昇するが,その後減少する傾向が見られた.この両海域での多様性の深度変化パターンの違いは,両海域の生産性の違いによるものであると考えられた.琉球海溝周辺域では,海溝群集はより浅い測点と大きく異なることは無かった一方で,千島海溝周辺域では,群集構造が水深に沿って変化し,海溝群集はより浅い測点と大きく異なっていた.群集構造の変化を制御する要因としては,琉球海溝周辺域では海底に供給される有機物量,千島海溝周辺域では水深,もしくは水深と相関する要因であると示唆されている. 南海トラフ周辺海域(土佐沖)に関しては,白鳳丸KH02-3航海でサンプル採集された8測点のうち4測点の科レベルの同定を行った.その結果,水深1000m以浅では,千島海溝周辺と同様,Ectinosomatidaeが優占するが,水深4000mを超えるトラフ軸には,千島-琉球両海溝軸とは大きく異なる群集構造が存在するという,興味深い結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
千島海溝周辺海域の研究成果は,すでに本年度末に論文にまとめ,初稿を共著者間でチェック中である,英文校閲後,平成24年度初めには投稿予定である,琉球海溝周辺海域のデータ解析もほぼ予定通り進展している.南海トラフ周辺海域に関しては,過去の知見がなく本年度初めて標本の同定を行ったため,若干作業が遅れているが,情報が蓄積するにつれて同定作業の効率は上がるはずである.
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