2011 Fiscal Year Annual Research Report
葉のサイズと葉脈の機能的統合を実現する生理学的メカニズムの解明
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22770032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
種子田 春彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90403112)
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Keywords | オーキシン / 葉の発生 / 葉脈 / 水輸送 |
Research Abstract |
陸上植物は乾燥した空気に囲まれて生活しているため、常に体内の水が蒸発散によって失われている。特に葉は表面積が大きいので、葉における水収支の安定は生存や光合成生産にとって重要な問題になる。これに対して、葉脈が葉脈内にある維管束内の道管で水を輸送することにより、葉身の隅々にまで水を供給して葉での水収支を支えている。葉脈による水輸送能力は維管束内の道管の数、直径によって決まるので、効率的な水輸送系を実現するためには蒸発散を行う葉面積に合わせた道管の数や直径の調節が必須である。申請者は、植物ホルモンが介して葉身と葉脈がその発生過程において相互作用することによって、効率的な水輸送系を構築しているという仮説を立てて研究を行っている。 本年度は、タバコ(Nicotiana tabaccum)の第3葉と第5葉を用いて、葉身と葉脈の木部の発達に対する植物ホルモンの影響を調べた。発生初期(葉長15 mm),発生中期(葉長45 mm),発生後期(葉長90 mm)の3回に分けて主脈基部2-3 mm片を複数個体から切り出して、主要な植物ホルモンを測定した。同時に、木部にある全細胞数(成熟道管+未成熟道管)、成熟した道管の数、放射方向の道管細胞列の数の時間変化から形成層における分裂速度と道管への成熟日数、道管直径の増加速度を計算し、これらの値とホルモン濃度の関係を調べた。その結果、葉面積と形成層における分裂速度の変化は、サイトカイニンの分子種のひとつであるトランスゼアチン濃度によって非常に良く説明された。分裂速度の変化は、同様にジベレリン酸やオーキシンとも高い相関関係があった。しかし、道管直径の増加速度については、有意な相関関係を示す植物ホルモンはなかった。さらに、発生の初期に葉身を切除した植物にオーキシンとサイトカイニンを与えた結果、主にオーキシンに応答して細胞数と道管直径の両方が増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉内での植物ホルモンの分布は、これまでオーキシンが定量されていたに過ぎない。さらに、葉脈という狭い部位に限定するような測定は、オーキシンへ応答するシス配列を35Sプロモーター、GUSまたはGFPとを繋いだ遺伝子を組み込んだものしかなかった。しかし、これは感度の点で問題があった。本年度の研究成果によって、複数の植物ホルモンを検出するとともに、葉や維管束の成長との関連を定量化し、いくつかの植物ホルモンの有効性を確認することができた。しかし、こうした植物ホルモンがどのようにして葉面積を代表するのか、という大きな問題は以前、残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、成熟したときに道管の数や直径が2倍近く異なる第3葉と第5葉を用いて測定を行った。平成24年度は、葉内における流域葉面積と道管の数や直径の関係を詳細に明らかにし、植物ホルモンの分布の測定を行う予定である。葉内では道管の数や直径が葉の末端に行くほど少なく、そして小さくなることが知られており、こうした道管形態の変化が効率的な水輸送に重要であることが生態学的な研究から明らかになっている。葉内での植物ホルモン濃度の分布は、こうした葉内の道管形態の変化を説明できるとともに、その発生場所や動きの推測に重要になる。また、その結果は、葉面積がどのような情報として変換されて維管束でどのように作用するのかを理解することにつながるはずである。
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Research Products
(5 results)