2011 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウム測定系を利用した葉緑体からの新規細胞内情報伝達経路の解明
Project/Area Number |
22770046
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
原田 明子 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80360626)
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Keywords | カルシウムイオン / 光合成 / 葉緑体 / シロイヌナズナ / 赤色光 |
Research Abstract |
葉緑体は、自身の機能や分化の状態に応じて核や他のオルガネラへと情報を発信する。しかし葉緑体からどのような因子を介して他のオルガネラへと情報が伝達されているかについては未解明な部分が多い。本研究では、葉緑体からの情報伝達に関与する因子の1つとして「光合成活性に依存して上昇するサイトソルのカルシウムイオン(Ca^<2+>)」を候補にあげ研究を行っている。これまでに、赤色光によりサイトソルCa^<2+>濃度が上昇すること、このCa^<2+>上昇は光合成電子伝達阻害剤DCMU,DBMIBにより阻害されることを示している。当該年度は以下を行った。 1)Ca^<2+>結合性発光タンパク質であるエクオリンの遺伝子を導入した斑入り突然変異体var2(葉緑体が発達した細胞と未発達な細胞を持つ)を用いて、赤色光によるサイトソルCa^<2+>濃度変化を調べた。野生型の葉では、赤色光により一過的Ca^<2+>濃度上昇が観察されたのに対し、var2の葉緑体が未発達な部分では観察されなかった。このことから、赤色光によるCa^<2+>濃度上昇には葉緑体の働きが必須であることが示された。2)野生型シロイヌナズナ葉から単離した葉肉細胞プロトプラストにおいて、パッチクランプ法により赤色光に依存したCa^<2+>電流と考えられる電流の測定に成功した(岡山大学資源植物学研究所森泉博士との共同研究)。赤色光による細胞内Ca^<2+>濃度上昇はCa^<2+>チャネルを介したCa^<2+>流入によるものであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画のうち、赤色光によるCa^<2+>上昇に必要な因子の解析(var2変異体など既知の突然変異体を用いた解析)については計画通りに進んでいるが、新規Ca^<2+>上昇異常突然変異体を選抜する実験については、突然変異誘起剤を施して得られた種子の発芽率が低く、またエクオリン発光が弱いものが多いために遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、四z2変異体などの既知の突然変異体を用いてCa2+濃度変化を測定し、Ca2+上昇に必要な因子を明らかにする。当初の研究計画には入れていなかったが、パッチクランプ法を用いた解析も行い、Ca^<2+>チャネル活性についての詳細な解析を行う。新規Ca^<2+>上昇異常突然変異体を選抜するために、再度突然変異誘起剤処理を施し、新たな種子を得る。
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