2011 Fiscal Year Annual Research Report
いもち病圃場抵抗性遺伝子Pb1の抵抗性発現機構の解析
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22770048
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
井上 晴彦 独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物研究開発ユニット, 主任研究員 (10435612)
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Keywords | イネ / マイクロアレイ / シグナル伝達 / いもち病 |
Research Abstract |
本申請研究では、これまでの申請者らの研究で示唆されたPb1からWRKY型転写因子へのタンパク質間相互作用を介したシグナル伝達の検証、およびその分子機構の詳細な解明を通じ、Pb1による抵抗性の安定性の分子基盤を明らかにすることを目的としている。GFPを用いた解析からPb1は細胞質と核に存在し、WRKY45は核に局在した。まず、Pb1の抵抗性にPb1タンパク質の細胞内での移行が抵抗性発現のために必要か否かを検証した。Pb1に核排除配列を付加した融合タンパク質を、恒常的に発現させた形質転換イネを作出した。この形質転換植物のいもち病抵抗性を調べると、野生型恒常的発現体に比較して抵抗性が低下していた。このことから、Pb1抵抗性には核内に移行することが必須であることが示された。Pb1系統においてWRKY45の遺伝子発現を抑制した形質転換イネを作成した。この形質転換植物の穂いもち抵抗性を調べると、その抵抗性が低下していた。これらのことから、Pb1の抵抗性はWRKY45に依存していることを明らかにした。さらに詳細にWRKY45への依存性を調べるために、Pb1とWRKY45の相互作用能が低下した変異体Pb1(Pb1-Quad)の過剰発現体(Pb1-Quad-ox)を作成した。Pb1からWRKY45の直接的なシグナル伝達の機構として、Pb1によるWRKY45のプロテアソーム分解からの抑制が関与している可能性があることを、in vitroで明らかにしてきた。これをin vivoで検証するために、本年度ではイネプロトプラストを用いた一過的発現系を用いて解析を行い、イネ細胞内においてPb1の共存によってWRKY45タンパク質が蓄積を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pb1からWRKY45へのシグナル伝達について解析を行った結果、Pb1の抵抗性にはPb1の核局在性が必要であることを明らかにした。また、その抵抗性にはWRKY45が必須であることを、二つの独立な実験によって証明することができた。さらに、植物細胞内においてPb1の共発現によるWRKY45保護の作用について、示唆的なデータを得た。これらのことから、本研究は計画通り順調に進んでいると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた実験において、データの再現性の確保および論文を執筆するレベルのデータを収集する。さらに、プロトプラストを用いた一過的な発現系を用いて、Pb1およびWRKY45を発現させ、WRKY45タンパク質の蓄積および、転写活性化能の活性化等を解析する。
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