2010 Fiscal Year Annual Research Report
真骨類におけるコルチコイドの局所代謝調節メカニズムの解析
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22770053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下部 誠 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40451893)
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Keywords | コルチゾル / ステロイド代謝酵素 / 11β-水酸化ステロイド脱水素酵素 / 糖質コルチコイド受容体 / 鉱質コルチコイド受容体 / ニジマス / アトランティックサーモン / 浸透圧調節 |
Research Abstract |
近年の哺乳類の研究により、哺乳類では浸透圧調節器官に到達したコルチゾルはステロイド代謝酵素によってさらに局所的に代謝され、細胞内でより細やかにコルチコイドの作用を調節していることが明らかとなってきた。本研究では、真骨魚類におけるコルチゾル制御機構を明らかにするため、サケ科魚類におけるコルチゾルの局所的な代謝調節機構の存在を調べた。 まず始めにニジマスの淡水と海水にそれぞれ馴致した群から、脳、下垂体、心臓、鰓、幽門垂、腸、頭腎、腎臓、肝臓、脾臓、筋肉、皮膚、血液、精巣を採取した。採取した組織内の糖質コルチコイド受容体(GR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)および2種類の11β-水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-HSD2および11β-HSD3)の遺伝子発現をリアルタイムPCR法によって測定した。淡水と海水馴致群の血漿コルチゾル濃度をELISA法によって測定した。その結果、ニジマスの海水馴致実験の結果、海水に馴致後では血中コルチゾル量、GR、MRおよび11b-HSD遺伝子の発現は淡水群と比べてどの組織でも有意な違いが見られなかった。これらの結果から、「ニジマスは広塩性魚のモデルとして適しているのか?」また「異なる塩分環境への適応はもっと短い時間で起こるのではないか?」という課題が見えてきた。 そこで次の実験では、アトランティックサーモンを用いて海水移行実験を行った。移行後2日、5日、8日、14日後に鰓を採取した。鰓におけるGR、MRおよび11β-HSD遺伝子の発現変化をリアルタイムPCR法によって解析した。その結果、淡水環境においてGRの遺伝子発現が高いという傾向があったものの、淡水移行により11β-HSD2の遺伝子発現のみが有意な増加を示した。この結果から、鰓において11β-HSD2が海水・淡水適応時にコルチゾル量を局所的に調節している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)