2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22770056
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
椋田 崇生 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (60346335)
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Keywords | 終脳 / 行動 / 学習・記憶 / 物体識別 |
Research Abstract |
本研究では、トビハゼの独特な生態に着目し、哺乳類の空間学習課題に類似した課題をトビハゼに課すことで、魚類の空間学習を担う脳領域を組織学的に同定することを目的としている。 脳機能の解析には脳地図が欠かせないので、本研究ではまず、トビハゼの脳地図の作成に着手した。トビハゼ終脳の組織化学的特性は、他の実験魚種とよく一致するが、正中領域に極めて明瞭な層構造が認められるなど、組織化がより進んでいることがわかった。明瞭な組織構造は、その脳領域の機能解析も飛躍的に進捗させる可能性が高い。本研究は、これまで十分な知見の乏しかった魚類の終脳の構造と機能の解明に立脚点を与えると思われる。 トビハゼの空間学習の検討には、彼らが淡水よりも希釈海水を好むこと(塩嗜好性)を利用した。透明円形水槽の4つの四分円区画の1つに希釈海水、それ以外の3つに淡水入りシャーレを設置したアリーナでトビハゼに希釈海水入りのシャーレを探索させた。その際、アリーナのそれぞれの区画外に異なる形状の視覚的手がかりを配した。トレーニング後、シャーレを空にした状態で再度探索をさせたところ、希釈海水の入っていたシャーレにトビハゼの多くは長く滞在した。このことは、希釈海水の位置を視覚的手がかりをもとに記憶していることを示している。そこで、これらのトビハゼの脳をただちに摘出し、c-Fosを免疫組織化学的に検出した。終脳背外側領域で陽性反応が多く認められたので、この領域が空間学習によって活性化された可能性が高い。これまでは脳の破壊実験から空間学習に関与する脳領域の検討を行った研究例は多くあるが、非破壊的に検討したのは本研究が初めてである。非破壊的な検討は、生理状態にある脳機能の解析に必須である。本研究は、魚類空間学習を担う本質的な脳領域の同定と機能の解明の基盤を構築したという点に意義を見出すことができる。
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